1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2024年2月1日 No.3623
  5. 2025年度に向けたあるべき経済財政運営

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年2月1日 No.3623 2025年度に向けたあるべき経済財政運営 -経済財政委員会企画部会

経団連は1月11日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会企画部会(伊藤文彦部会長)を開催した。一橋大学経済学研究科の佐藤主光教授から、2025年度に向けたあるべき経済財政運営について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 日本経済のアルゼンチン化

最近の日本経済はアルゼンチン化している。物価高や為替安に加えて、中長期的な潜在的成長率が低下しているためである。この背景には、過去の財政運営の誤り、つまり成長戦略ではなく景気対策のための財政運営が行われてきたことが挙げられる。ヒトの体に例えるならば、体調管理(景気対策)ばかりに注目して、体力増進(成長戦略)に焦点を当てなかった。そのため今こそ、体力増進、成長に資する財政政策を進める必要がある。

■ 変わる「潮目」

また足元では、財政政策をとりまく経済環境の潮目が変わりつつある。従来は、金融緩和による低金利、デフレ経済による「カネ余り」により、政府の利払い費は抑制され、日本国債は国内で安定的に消化されてきた。

一方、円安・物価高、金利の上昇圧力により、規律が欠如した財政運営を続けていては、投機的な投資家の国債売り圧力への対応や、巨大災害等に備えた財政余力の確保が困難になる。

■ 新たな財源の確保

こうしたなか、持続可能な財政運営には、歳出の効率化・適正化はもちろん、新たな財源の確保が必要である。

消費税の増税は安定財源の一つとして有効である。もちろん、国民の間ではさらなる消費税増税への反対が根強いことも承知している。

とはいえ、現在と同じ質の社会保障サービスを維持するためには、何らかの新たな財源確保が必要になる。消費税の増税以外にも、社会保険料の引き上げ、または社会保障サービスの質の低下(給付の削減)なども、今後取り得るべき一つの選択肢である。

いずれにせよ、社会保障の受益と負担のあり方については、国民に熟慮が求められる。そのため政治家には、複数の政策の選択肢を示しつつ、政策ごとの受益と負担の程度や方法もあわせて提示し、税と社会保障の一体改革に関する国民的議論を引き起こしていくことを期待する。

■ 財政健全化への道筋

これらを踏まえ、25年度に向けたあるべき財政運営について3点、提言する。

1点目は、「財政規律はコントロール」ということに留意すべきである。国民のなかには、財政規律イコール緊縮財政と考える人もいる。しかし、財政規律とは、あくまで財政規模と予算配分をしっかりコントロールするという姿勢である。

2点目は、「無謬性(判断に誤りはない、あってはならないこと)を捨てた政策の効果検証」が必要である。近年、政府は大型補正予算を組んでいるが、それらを通じて実施された政策の効果の事後的な検証は徹底されていない。また補正予算のなかには通常予算で措置されるべき項目が含まれていることもある。政策実施の機動性・柔軟性は確保しつつも、随時、必要な政策について見直していくことが求められる。

3点目は、「財源論は選択肢の問題」である。税と社会保障の一体改革について、政府は国民に対し、政策の選択肢を幾つかしっかりと提示すべきである。

◇◇◇

講演後の意見交換では、実効ある財政規律を行うための仕組み、日本政府の資産の活用方法の可能性について質疑応答があった。

【経済政策本部】

「2024年2月1日 No.3623」一覧はこちら