21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は12月22日、オンラインセミナー「COP28等地球温暖化をめぐる国際情勢と日本の課題」を開催した。有馬純東京大学公共政策大学院特任教授が、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の現地調査の状況を報告した。概要は次のとおり。
■ 先進国と途上国の主張
今回のCOP28で争点となった、温室効果ガス削減目標や化石燃料の取り扱いについては、2年前のCOP26で焦点が当たって以来、野心的な目標を合意文書に盛り込みたい先進国と、各国の異なる事情に沿って対応したい途上国の主張が対立する形となっている。
■ 温室効果ガス削減
温室効果ガス削減目標については、今回の合意のなかで、先進国が求めてきた数値や期限を挙げ、これを「達成する必要があることを認識する」と記載された。しかし「認識する」や「すべての国で達成することを意味するものではない」との文言により、途上国がこれらの目標に整合的な削減計画を出すことはないと考えられる。
■ 化石燃料の取り扱い
化石燃料については2年前のCOP26において、排出削減対策を講じていない石炭火力発電だけが取り上げられ、かつ「段階的削減」としていた。その後、先進国は対象を石炭だけでなく化石燃料全体へ拡大することや、文言の強化を求めてきた。途上国は化石燃料には言及せず、石炭についてCOP26と同様の主張を繰り広げていた。
COP28の合意では、石炭火力発電についてCOP26と同様の記載となった。一方、化石燃料全体への言及が初めてなされ「化石燃料からの移行」と表現された。これは化石燃料依存度を下げる方向性を示しているものの、その終着点は曖昧となる表現である。
■ 具体的な移行手段
化石燃料からの移行手段として、再生可能エネルギー、原子力、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を含む低排出・ゼロ排出技術の加速が盛り込まれた。原子力に言及したのはCOPの歴史のなかで初めてである。
また道路交通における排出削減も、米国などが強調していたゼロエミッション車や電気自動車(EV)だけではなく、日本の主張などにより、水素自動車やハイブリッドなど低排出車の迅速な導入が言及された。
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有馬氏は、今回のCOP28では化石燃料ばかりに焦点が当たったわけではなく、全体としてみると多様な道筋が示されており、COPの正確な姿を知ってほしいと締めくくった。
講演後、有馬氏は参加者からの質疑に応じ、経団連の会員企業として取るべき対応に関して、経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」への参加と、設定した削減目標・長期目標にまい進するよう促した。グリーントランスフォーメーション(GX)のビジネスチャンスについては、パビリオンに多数展示された日本の優れた技術に、非常に多くの人が興味を示していたことを引き合いに出しながら、いかに優れた技術を作り世界に展開していくかが大切であると述べた。
【21世紀政策研究所】