経団連のOECD諮問委員会(稲垣精二委員長)は12月20日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。2024年、わが国が10年ぶりに経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の議長国を務めることを見据え、経済産業省の柏原恭子通商機構部長から、G7大阪・堺貿易大臣会合(10月28~29日)の成果とOECD閣僚理事会に向けた同省の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 通商政策の現状と課題
コロナ禍やロシアによるウクライナ侵略、米中間の戦略的競争等、通商政策をめぐる状況は複雑化している。こうしたなかでも、わが国としては、(1)WTOを中核とするルールベースの国際貿易秩序の再構築(2)有志国との信頼できるサプライチェーンの構築(3)グローバル・サウスとの関係強化――の三つを同時に進めていく。
■ G7貿易大臣会合
23年は日本がG7議長国を務めた。4月のオンラインでの第1回会合に続き、10月28~29日に大阪・堺で第2回G7貿易大臣会合を開催した。貿易と持続可能性(環境、開発、デジタル)、自由で公正な貿易体制の維持・強化(WTO改革等)、公平な競争条件(市場歪曲的な産業補助金等)、経済的威圧・サプライチェーン強靭化の各セッションで議論し、G7貿易大臣声明を採択した。サプライチェーン強靭化についてはアウトリーチセッションを設け、グローバル・サウスの国々を含むアウトリーチ諸国やOECDなど国際機関が参加した。
■ OECD閣僚理事会に向けた取り組み
OECDは約1800人の専門家を抱え、(1)各国の基礎的な統計・データベース整備や政策研究(2)分野別の政策ガイドラインの策定(3)加盟国間の相互審査――を通じて各国への政策提言を実施する「世界最大のシンクタンク」である。例えば、TiVA(グローバルバリューチェーン〈GVC〉の付加価値貿易データベース)やサービス貿易制限指標(STRI)などを提供し、ファクトやエビデンスに基づくわが国の産業・通商政策立案に貢献している。また、自由・民主主義、法の支配といった普遍的価値観を共有するOECDは、迅速な合意形成がしやすく、世界のスタンダードセッター(国際ルール形成のプラットフォーム)の役割を果たしている。
日本はG7議長年において貿易やデジタル等を議論するにあたり、OECDの分析・研究成果も参照した。例えば、産業部門の政府支援に関するOECDのレポートは、公平な競争条件の議論のベースとして活用した。また、改訂作業が進められている「国有企業のコーポレートガバナンス・ガイドライン」(注)では、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)といった経済連携協定での国有企業の規定内容も参考とし、情報開示や透明性の確保等を明記している。
デジタル貿易の分野では、OECDの調査において、データローカライゼーション措置を採用する国が増加傾向と指摘したことが、正当化できない同措置に対抗すべきというG7共通のメッセージを発出するうえで重要な土台となった。また、G7でDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)具体化のための国際枠組み(IAP)の設立が合意され、OECDと着実に準備を進めている。
これらを24年のOECD日本議長年での成果につなげるべく、OECDの関係委員会や閣僚理事会でも議論していく。
(注)国有企業が効率的に透明性をもって経営されるための情報開示等の提案に主眼を置いた法的拘束力を持たないガイドライン。05年の策定以降、順次改訂されている
【国際経済本部】