経団連は12月20日、産業競争力強化委員会(橋本英二委員長、澤田純委員長、岡藤正広委員長)をオンラインで開催した。最先端半導体の国産化を目指すRapidus(ラピダス)の小池淳義社長から、同社が目指す世界と戦略について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 世界と日本の半導体産業
半導体はPCやスマートフォンをはじめあらゆる製品に搭載されている。例えば自動車には1台当たり約1400個もの半導体部品が組み込まれている。半導体産業は、半導体を製造し供給するメーカーだけでなく、製造装置、原材料、ガス、化学薬品、電力・水、設計、ソフトウエアなど多岐にわたる関連分野との連携で成り立っている。
半導体の種類は個別半導体と集積回路(IC)に大別される。現在、ICの世界市場は約62兆円であり、2030年には100兆円規模に達するといわれている。ICのなかでも、ロジックについては半導体の製造を受託するファウンドリーが台頭しており、台湾のTSMCが55%のシェアを握っている。近年は3~5ナノメートルまで微細化した先端領域へと事業の主軸が移行している。
日本の半導体産業は1990年代には世界シェアの50%超を握っていたものの、現在は10%程度まで落ち込んだ。それに代わって米国やアジア(中国・韓国・台湾)がシェアを伸ばしてきている。日本の半導体が凋落した原因は、日米半導体摩擦によるメモリー敗戦や、設計と製造の水平分業化のトレンドを見誤ったことなどさまざまな要因が挙げられるが、根底には世界シェアの過半を握ったことで「おごり」が生じたという点に尽きる。
米国のCHIPS法をはじめ各国が国家戦略として半導体産業への支援を進めるなか、日本としても自前主義を脱し、国内外のさまざまな研究機関や事業体との連携により産業振興を図ることが重要である。
■ スピードとグリーンの時代へ
こうした背景のもと、2ナノメートルの最先端ロジック半導体の製造を目指し、2022年8月に当社を設立した。経営理念として、人材育成、最終製品・産業の創生、グリーン化技術の三つを掲げている。日本政府からの支援のほか、米国のIBMと戦略的パートナーシップを締結し、欧州の半導体研究機関であるIMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)をはじめグローバルな連携を進めている。
現在は商品サイクルが短くなるスピードの時代であり、いかに早く製品を完成させ、供給するかが重要である。当社は、設計支援・前工程・後工程を一体で最速化する「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」という新しいモデルを展開したいと考えている。
また、グリーンの時代でもある。AIの発展に伴い電力消費量の急増が推測されるなか、半導体産業としては微細化や専用チップ化による電力消費の削減のほか、工場のグリーン化などに取り組むことが重要である。
■ 北海道バレー構想
北海道千歳市で工場建設を進めている。AI半導体をコアに産業構造をアップデートする6次産業化を北海道・日本から全世界に展開し、北海道を世界のデジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)のハブとする「北海道バレー構想」を自治体と共に推進していく。
今後、政府には、(1)インフラ(再生可能エネルギーの普及加速、競争力のある電力・水・燃料価格設定)(2)環境(有機フッ素化合物〈PFAS〉対策検討のための本格的な推進体制整備)(3)グリーン(AIの消費電力削減に向けたグリーンAI推進体制整備)――などの基盤整備を期待しており、経団連と連携して働きかけていきたい。
【産業政策本部】