経団連は12月11日、東京・大手町の経団連会館で大野敬太郎衆議院議員・自由民主党経済安全保障推進本部事務局長から、同党が2023年10月に公表した「経済的威圧など経済安全保障上の重要政策に関する提言」等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 経済的威圧の定義と類型
経済的威圧とは、経済的脆弱性や経済的相互依存関係等の非軍事的な力を「武器化」して他国に圧力をかけることにより、外交政策・国内政策の意思決定や健全な経済発展を阻害し、他国の政策を自国に有利な形に変更させようとする試みである。
経済的威圧の手段は、(1)モノの輸出入制限などの貿易制限措置(2)査証発給制限や在留邦人の拘束等ヒトの移動や身体に関する制限措置(3)在留企業に対する営業停止処分や不買運動など企業の営業活動に対する制限措置(4)開発援助の一時停止などカネの流れに対する制限措置――など、多岐にわたっている。その際、偽情報を含む不透明な影響力を行使したり、非国家主体を非公式に動員したりする可能性もある。
■ 経済的威圧への対応
経済的威圧は、戦後、わが国が享受し、一貫して擁護してきた、自由で開かれ安定した国際経済秩序に対する重大な挑戦であり、断固として認めることはできない。わが国としては、国際秩序を維持・擁護する立場を明確にし、経済的威圧は許さないとの断固たる意志を国際社会に示すとともに、経済的威圧に対する取り組みを平時から進めつつ、経済的威圧を受けた場合の対応を戦略的に検討する必要がある。
平時における取り組みとしては、サプライチェーンの分析・強靭化、経済安全保障上のリスクに関する点検の強化等を進めるべきである。また、産業界等が安心して政府に情報共有できる通報窓口の設置や、政府から産業界等への情報提供も行うべきである。加えて、強靭なサプライチェーンを構築するため、世界貿易機関(WTO)等の多角的通商体制を維持・強化することが重要である。
わが国が経済的威圧を受けた場合に備え、産業界等と連携して状況を把握するなど、対処するための体制(ガバナンス)を築かなければならない。また威圧行為を受けた企業を公的に支援することも考えられる。威圧国に対処するにあたっては、G7をはじめとする同志国などとも協調すべきである。その際、国際法上の正当性を担保しつつ、威圧国から政策的情報を引き出す可能性や次なる経済的威圧を抑止できる可能性等を踏まえるとともに、わが国が講ずる措置に関してあらかじめ手の内をさらし、威圧国を利しないよう留意する必要がある。
経済的威圧を含めた経済安全保障は、産業界が「自分事」としてとらえたうえで、政府と産業界等が緊密に連携・協調して取り組む必要がある。このため政府は具体的な経済安全保障戦略を策定し、政府の考え方を「見える化」すべきである。
【国際経済本部】