経団連は10月26日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会企画部会(大内香部会長)を開催した。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の佐藤大輔企画官から、わが国のバイオ戦略の改定に向けた検討状況について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ わが国のバイオ戦略
「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会(注)を実現する」ことを目標に、わが国は19年にバイオ戦略を初めて策定した。30年時点で総額92兆円規模のバイオ関連市場の確立を目指す。具体的には高機能バイオ素材やバイオプラスチック製造といった「バイオ製造」分野、持続的な食料生産・木材活用を進める「一次生産」分野、ヘルスケアや機能性食品、バイオ医薬品・再生医療等関連産業といった「健康・医療」分野での市場拡大を進める。これら成長市場への人材・投資を呼び込み、市場に製品・サービスを供給するため、全国各地で多様で個性的なバイオコミュニティーを認定し、各種施策を通じてその取り組みを支援している。加えて、研究開発・事業化に必要なデータ基盤の整備を進める。
「バイオ戦略2019」および「バイオ戦略2020」の策定以降、バイオ関連の各種施策の動きも踏まえ、バイオ戦略の改定について、バイオ戦略有識者と検討を開始した。
■ バイオ分野における各国の動向
諸外国においても、バイオエコノミーの推進は医薬品・機能性食品・新素材開発やCO2削減等の課題解決と経済成長に不可欠なものであると認識されている。米国では22年に「バイオテクノロジーおよびバイオ製造に関する大統領令」が出され、バイオ製造の拡大等に向けて集中的な投資を行う方針が表明された。バイオ分野が果たし得る役割は根本的に変化しており、今後の取り組みについて、これまでの常識を覆すような変革が必要な時期にある。
わが国においても、令和4年度補正予算としてバイオ製造や健康・医療領域を中心とした1兆円規模の公的支援が決定され、スタートアップ育成等バイオエコノミーの実現に向けた政策を強力に推進している。
■ バイオ戦略改定の検討課題
バイオ戦略本体の改定にあたり、いくつかの検討項目が考えられる。
まず、30年の実現を目指す世界最先端のバイオエコノミー社会の姿について、関係者の取り組みを促すべくわかりやすく示すことである。次に、バイオものづくりや創薬支援をはじめとした近年の変化を踏まえて強化されている施策に関して、成果の実装や製品化を加速できるよう、産業創出に向けた事業環境の整備、バイオ由来製品の普及に向けた市場環境の整備につながる戦略を示すことである。さらなるバイオ関連市場の創出に向けた最新技術の動向に加えて、活動が本格化するわが国のバイオコミュニティーの目標や取り組みを示すことも考えられる。23年内に経済界をはじめ関係者からヒアリングを行い、24年年明け以降は関係省庁を含めて、今後の対応について検討する予定である。
(注)バイオテクノロジーや再生可能な生物資源等を利活用した、持続的で、再生可能性のある循環型の経済社会
【産業技術本部】