経団連は10月26日、東京・大手町の経団連会館で地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)を開催した。現在、政府では第33次地方制度調査会(地制調)において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やポストコロナにおける経済社会の変化を踏まえて、地方公共団体の相互の連携・協力のあり方等を議論している。そこで保科実総務省自治行政局行政課行政企画官から、地制調での議論の状況について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ DXの進展を踏まえた対応
政府では、社会全体のDXの進展に的確に対応するため、地方における事務の実態や意見を十分把握しながら、国も積極的な役割を果たすかたちでさらなるデジタル技術の活用等を図っていくことを検討している。具体的には、住民サービスの利便性向上、効果的・効率的な行政事務の推進という観点から、オンライン申請の推進・強化や、マイナンバーカードの利活用の推進といった、住民との接点(フロントヤード)の改革に取り組んでいる。また、フロントヤード改革を支える内部事務(バックヤード)のシステム整備については、自治体情報システムの標準化・共通化に向けて、2025年度末までに、ガバメントクラウド(標準化対象事務について、標準化基準に適合した情報システム)を活用した標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行を目指すこととしている。その際、税金・医療・福祉・子ども子育て等に関する20業務に対し、国が地方公共団体の基幹業務システムに関する基準を策定する。さらに、地方税以外の公金納付についても、遅くとも26年9月までに地方税ポータルシステム(eLTAX)の活用を可能とすべく、関係府省と協議している。そのほか、地方公共団体におけるデジタル化に必要な人材の確保・育成を推進している。例えば、都道府県による人材研修を通じて市町村のデジタル化を支援したり、あるいは各地方公共団体で中核を担う職員を集中的に育成するため、財政面での措置を含めた対策を講じたりしている。
■ 地方公共団体相互間の連携・協力および公共私の連携
今後も人口減少の加速が予測されるなか、40年ごろにかけて生じる課題(インフラ・公共施設の老朽化、公共交通網の弱体化、集落機能の維持困難化、労働力不足等)に対応していくため、国としては、地方行政のデジタル化や公共私の連携に加え、地域の枠を超えた地方公共団体の多様な広域連携を推進している。同時に、それぞれの地域に対して、今後起こり得る変化と課題への気づきを与えるため、直感的にわかりやすい「地域の未来予測」の作成を促すとともに、同予測等をめぐり住民等と積極的に議論し、その結果をさまざまな政策や計画へ反映するよう働きかけている。
■ 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態への対応
さらに、新型コロナウイルス感染症で生じた行政面の諸課題への反省を活かすこととしている。今後発生し得る自然災害や感染症のまん延等の事態が国民の安全に重大な影響を及ぼす場合に、国民の生命等の保護のため、国としての関与のあり方、地方自治体との情報共有・コミュニケーションの円滑化、必要な人員と関連施策等のリソース確保について、検討を進めている。
【産業政策本部】