経団連は6月15日、東京・大手町の経団連会館でアジア・大洋州地域委員会ASEAN経済連携強化部会(田中秀幸部会長)を開催した。神奈川大学の大庭三枝教授から日ASEAN関係の課題と展望について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 独自の利益を追求するASEAN
ASEAN諸国は、大国間の競争が行われる戦略的アリーナとの見方があるが正確ではない。各国は自らの国益・利益の観点から主体的に行動しており、米中のどちらにも軸足を置いていない。
ASEAN諸国はコロナ禍から脱却し経済発展を遂げている。大別すると、グローバル化の進展のなかで工業化による発展を達成した先発国グループ、開発資金の多くを海外に依存し、マクロ経済の不安定性を抱える後発国グループの二つがある。彼らは決して一枚岩ではないものの、同時に、「ASEAN中心性」概念のもと、ASEANとしてのまとまりを外部に対する交渉力強化や自立性の維持のために利用している。この点が興味深い。
■ 米中対立のなかでのASEAN
ASEANの7カ国がインド太平洋経済枠組み(IPEF)に参加している。これは通商上の利益の観点だけでは説明が難しい。ASEANは安全保障上、米国の関与を期待しているものの、その関与の永続性については疑義を抱いている。
米中の経済的デカップリングが進んでいる。ASEANは、中国を含む東アジアの工業化と同地域のサプライチェーンの拡大・深化によって発展を遂げてきた。しかし、米国の輸出禁止措置により、ASEAN企業の輸出先としての中国市場へのアクセスが制限されるというリスクを負っている。また、中国・ASEAN間のサプライチェーンの分断が進むリスクも存在する。
■ 日本のASEAN外交の方向性
先進国、および開発支援に依存する途上国のいずれにも属さない、いわば新興国や発展する途上国に対してどのように外交を展開するかは、今後の日本にとっての大きな課題である。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなど、ASEAN諸国はそのカテゴリーに属する国々を含んでいる。
2023年は日ASEAN友好協力50周年にあたる。今後のパートナーシップ強化に向け、(1)各国の主権の尊重と相互協力に立脚した平和で包摂的なルールに基づく地域秩序の構築(2)経済発展、持続可能性、公正性を充足した「共生社会」の実現(3)日ASEAN間の相互理解と相互信頼の醸成――が重要である。
【国際協力本部】