1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2023年7月20日 No.3599
  5. 文科省における宇宙分野の研究開発の取り組み

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年7月20日 No.3599 文科省における宇宙分野の研究開発の取り組み -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

上田氏

経団連は6月22日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(佐藤智典部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を東京・大手町の経団連会館で開催した。文部科学省研究開発局の上田光幸宇宙開発利用課長から、同省における宇宙分野の研究開発の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙基本計画の改定

政府は6月13日、3年ぶりに宇宙基本計画を改定して公表した。新たな宇宙基本計画では、わが国が目指す将来像を初めて描いたうえで、基本的なスタンスと具体的なアプローチを示した。将来像の一つとして技術・産業・人材等の「宇宙活動を支える総合的基盤の強化」、具体的な機能として「宇宙航空研究開発機構(JAXA)の戦略的かつ弾力的な資金供給機能の強化」を掲げた。米国航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)が有するような資金供給機能を今後強化することで、産業界や大学・ベンチャーへ資金を供給し、わが国全体で宇宙技術開発を推進する。

■ ロケット開発

現在、H-ⅡAロケットから新型のH3ロケットへの遷移期にある。H3ロケットにおいては新型第1段エンジンが最大の開発項目であった。従来エンジンの約10倍の推力を発揮する一方、全体としてコストの削減、衛星打ち上げニーズへの柔軟な対応、信頼性の向上を進めた。H3ロケットの打ち上げ失敗にかかる原因究明作業は現場のエンジニアが着実に進めており、その姿勢および詳細な調査報告に敬意を表する。また、今後需要が見込まれる小型衛星打ち上げニーズに対応するため、イプシロンSロケットの開発も並行して進めている。

■ 人工衛星の開発・運用

地球軌道上に2万個以上存在するスペースデブリの状況を監視するため、JAXAで宇宙状況把握システムを有している。デブリ除去に関する国際標準を整備する場では、すでに軌道上にあるデブリを取り除く概念を日本が世界に向けて提案することで貢献している。あわせて、デブリ除去の技術開発を進めている。

■ 宇宙科学・探査

「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから回収したサンプルから、サイエンス誌やネイチャー誌の表紙を飾る目覚ましい科学的成果を上げた。次の火星衛星探査計画(MMX)では火星衛星フォボスからサンプルを回収する。MMXを通じて培う深宇宙補給技術・重力天体表面探査・重力天体着陸技術・有人宇宙滞在技術は、MMXのみならず今後の国際宇宙探査に必要な技術となる。

■ 有人宇宙活動

持続的な月面探査実現を目指す米国の「アルテミス計画」に日本も参画しており、有人与圧ローバーの新規開発を担当している。有人与圧ローバー内では宇宙飛行士が宇宙服を脱いで滞在できる。そのため、一日の作業を終えその場で休憩して次の作業場に向かうことが可能となり、探査範囲が広がる。

また、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で培った生命維持技術を発展させ、月周回軌道宇宙ステーションの居住棟建設に協力している。加えて、新型宇宙ステーション補給機HTV-Xの開発も進めている。

■ 産業連携

民間企業の協力なくして宇宙開発は進められない。宇宙ベンチャー活性化のため2018年から宇宙イノベーションパートナーシップ事業を開始し、ロボット化、宇宙旅行保険、宇宙を楽しむコンテンツ化、宇宙食料等の事業化・技術開発を推進している。また、スタートアップ振興のための技術開発支援であるSBIR制度では、23年度中に宇宙輸送・デブリ対策の実証化支援を開始する。

【産業技術本部】

「2023年7月20日 No.3599」一覧はこちら