経団連地域経済活性化委員会(永井浩二委員長、小林哲也委員長、月岡隆委員長)は、わが国経済社会の持続可能性と強靱性を維持・確保する観点から、ポストコロナにおける国と地方の行政システムや社会機能の分散のあり方について検討を進めている。12月14日の会合では、元三重県知事の北川正恭早稲田大学名誉教授から、地方分権をめぐる経緯とともに、これからの国と地方のあり方に関する課題や経済界への期待等について聴いた。
国全体の利益と個の権利・自由は相克の関係にある。憲法上、国と地方は対等の権利を持つとされているが、これまでは、制度補完的な中央集権体制のもと、地方自治体が国に頼るかたちであった。このため、国と地方が対等に協力関係を築くには、地方自治体にもある程度の力が必要である。デジタル化社会が到来し、国と地方間の情報の制約や境界がなくなるなか、経済界も、時代に即した地方自治体の体制・規模について検討、提案してもらいたい。特に、経団連には、国からの改革を推進するだけでなく、地方が具体的な行動を通じて国を変えるという運動にも目を向けてほしい。
また、地方行政に焦点を当てると、自治体が垂直統合的にすべての公共サービスを担う現行の仕組みは、10年持たずして終焉を迎え、水平分業の時代が必然的に到来する。生産年齢人口の減少および高齢者の増加によって、税収が確保できなくなり、地方自治体だけで行政サービスを担うことは不可能になる。例えば、本来、都市計画は官の仕事であるが、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代には民が担わなければ対応できない。コンセッション方式などPPP(Public Private Partnership、官民連携事業)・PFI(Private Finance Initiative、民間資金等活用事業)もさらに進めていく必要がある。官民共創時代の到来であり、情報公開が大前提であるが、民間の力を官に貸してもらいたい。
【産業政策本部】