経団連は10月13日、都市・住宅政策委員会企画部会(横本美津子部会長)をオンラインで開催した。
一つの建物に複数の住居や店舗を持つ区分所有建物(マンション等)の管理等について定めた「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)により、マンション等の管理や建て替え等の意思決定は、区分所有者および議決権による多数決で決議することとされている。
今後、老朽化したマンション等の急増が見込まれるなか、その管理や建て替えの円滑化は重要な課題である。しかし、マンション等所有者の高齢化・相続等を背景に、所有者の非居住化や不明化が進行しており、決議で必要な賛成数を得られず、マンション等の管理不全や建て替えが困難になることが懸念されている。
経団連は、区分所有法制の見直しを2006年から継続して要望してきた。規制改革推進会議での議論等を経て、21年3月に、法務省の参画のもと「区分所有法制研究会」が設置され、見直しに向けて論点を整理した。
22年9月、同研究会における議論をまとめた報告書が公表されたことから、法務省大臣官房の大谷太参事官から、区分所有法制の見直しに向けた論点等について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 区分所有建物の管理の円滑化
マンション等の長寿命化等のため共用部分の変更を行うには、決議に際して多数決要件(4分の3)を満たす必要がある。しかし、この要件を満たすことは難しいため、必要な工事が迅速に行えないという指摘がなされてきた。これに対応するため、多数決割合を単純に引き下げる案、外壁崩落のおそれやバリアフリー未適合など一定の客観的要件を満たす場合に多数決割合を引き下げる案等について論点整理が行われた。
また、決議を円滑化するため、公的機関の関与のもと、所在不明の所有者を決議の母数から除外する仕組み、集会に参加しない所有者を決議の母数に含めず、出席者の多数決による決議を可能とする仕組み等についても提案されている。
■ 区分所有建物の建て替えの円滑化
マンション等の建て替え決議の多数決要件(5分の4)を満たすことが難しく、必要な建て替えが迅速に行えないとの指摘については、多数決割合を単純に引き下げる案、耐震性不足など一定の客観的要件を満たす場合に多数決割合を引き下げる案等について論点整理がされた。
また、建て替えが決議されても、専有部分の賃借権が消滅せず、工事の円滑な実施を阻害するケースがあることから、建て替え決議がされた場合、一定の手続きを経て賃借権を消滅させる仕組みについても提案されている。
なお、論点整理が早期に進んだことや、これら課題の重要性に鑑み、予定より半年程度前倒しして、法務大臣は22年9月に諮問機関である法制審議会に諮問し、「区分所有法制部会」が新設された。10月28日から議論を開始する予定である。研究会の報告書も踏まえ、さらなる調査審議を進めていく。
【産業政策本部】