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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月8日 No.3558 米国感染症専門家と懇談 -感染症危機対応や日本版CDCの創設について意見交換

経団連の工藤成生危機管理・社会基盤強化委員会企画部会長、河本宏子同企画部会長代行らは8月2日、東京・大手町の経団連会館で、米国保健福祉省および米国疾病予防管理センター(CDC)で感染症対策に従事している専門家のうち、米国笹川平和財団「The SEED 2022」プログラム参加者と懇談した。米国側の発言概要は次のとおり。

■ 緊急時における危機管理体制

緊急事態が発生した際に重要なのは、すぐに中央指揮所を立ち上げたうえで、関係組織の役割と責任を明確にすることである。米国では、あらゆる種類の緊急事態が起きた直後に、国レベルと州レベルの双方で危機管理センター(Emergency Operation Center)を立ち上げ、同センター1カ所に、さまざまな部門から必要とする人員や設備等のリソースを集中させる。これにより合理的な活動が可能となる。また、すべての緊急事態に対してインシデント・コマンド・システム(ICS)という意思決定システムを適用している。ICSに基づき指揮官が判断することで、どの部門がどのような役割を持つのかが明確となる。あらゆる災害に適応できるICSは米国の緊急事態時の対応を決める「核」となっていることにとどまらず、他の国や組織でもこのシステムが導入されてきている。緊急事態への対応を成功に導く原理・原則がICSになりつつあると感じている。

あらかじめ危機管理体制を整えたとしても、今までと全く異なる事態が発生した場合には、想定したリソースとは異なるものが必要となり、体制が機能しないことが起こり得る。こうした状況に陥った際には、結局は個人と個人の人間関係が肝になる。関係各所との関係を良好に保ち、話し合いながら問題を明確にし、調整を重ねていくことが大切である。完璧を期して平時から日々訓練・鍛錬をし、教訓を学びながら災害に備えることで、成長していくと考えている。

■ 日本版CDC創設に対する留意点

国レベルで公衆衛生にかかる機関を創設する場合、州や自治体など、地方の組織との強いコネクションが必要不可欠である。また、新たな機関の設立時には、政府のなかでどのような役割や責任を持つ組織と位置付けるのか、他の政府部局とどのように責任を分かち合い、連携していくかを明確にしなければならない。さらに、その組織は、緊急事態が発生した際にすぐにICSのような指揮命令系統を立ち上げられるよう、あらかじめ訓練し、実装できるようにしておかなければならない。

他国でも、CDCと同様の組織を立ち上げる動きが出てきている。組織を創設する際は、それぞれの国情やニーズを踏まえて、柔軟に対応すべきである。CDC同様の組織を創設した国から、その設置に至るまでの経験等を学ぶことが有意義であろう。

どのような組織・政策であっても、それが成功するための基盤として、柔軟性、適応性、強靱性が必要である。米国の危機管理センターやICSのような危機管理体制の導入を推奨したい。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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