経団連は8月3日、経済安全保障推進法の基本方針および基本指針に関する懇談会をオンラインで開催した。経済安全保障推進法では、全施策に共通する基本的な事項を示す「基本方針」と、四つの個別施策ごとの「基本指針」を策定することとされている。政府は現在、基本方針案と、特定重要物資安定供給確保(サプライチェーンの強靱化)および特定重要技術研究開発(官民技術協力)の2施策の基本指針案について、パブリック・コメントを実施している。同懇談会では、パブリック・コメントに付された案について、内閣府の経済安全保障推進室から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 基本方針案
基本方針では、経済安全保障推進法で規定する4施策をはじめ、安全保障の確保を推進するための種々の経済施策を全体として適切に機能させるため、各施策に共通する基本的な事項を定める。
基本的な考え方として、自由で開かれた経済を原則とし、民間活力による経済発展を引き続き指向しつつも、国際情勢の複雑化等のさまざまなリスクを踏まえ、経済面における安全保障上の一定の課題については、市場や競争に過度に委ねず、政府が支援と規制の両面で一層の関与を行っていくと記載している。また、施策の実施にあたっての配慮事項として、安全保障の確保と事業者等の自由な経済活動との両立を図ることや、WTO協定等の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意することなどを記載している。
この他、施策間の一体性・整合性を確保するように努めることや、経済安全保障推進法上の規制措置は安全保障の確保に合理的に必要と認められる限度で行うことなども記載している。
■ 特定重要物資安定供給確保基本指針案
本制度では、供給の途絶などにより、国民の生存や国民生活・経済活動等に甚大な影響を及ぼす事態を生じさせるおそれのある重要な物資の安定供給確保を図る。
同制度の運用にあたっては、民間事業者等による創意工夫を活かしたかたちで、サプライチェーンの強靱化を後押しすることを基本とする。また、物資ごとの特性に応じ、生産基盤の整備、供給源の多様化、備蓄等の民間事業者等による多様な取り組みを促進し、安定供給確保を図る。なお、重要な物資のサプライチェーンの状況を把握するため、必要と認める時はサプライチェーン把握のための調査を実施するが、調査の対象範囲や内容等は適切に絞り込む。
特定重要物資には、四つの要件((1)国民の生存に必要不可欠または広く国民生活・経済活動が依拠していること(2)外部に過度に依存または外部に過度に依存するおそれがあること(3)外部から行われる行為による供給途絶等の蓋然性(4)同制度による安定供給確保のための措置を講ずる必要性)をすべて満たす重要な物資が指定される。
■ 特定重要技術研究開発基本指針案
本制度では、先端的技術のうち、当該技術が外部に不当に利用された場合等に、国家および国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがある特定重要技術の研究開発の促進とその成果の適切な活用を図る。
特定重要技術の研究開発を進める際には、研究開発等を代表する者として相当と認められる者の同意を得たうえで「協議会」を設置し、機微な情報を含む有用な情報の交換等を行う。関係行政機関等は規制緩和の検討や国際標準化の支援等の伴走支援を行う。研究成果は公開を原則とし、協議会における守秘義務の運用等については、構成員の全会一致で定める規約で規定する。また、特定重要技術の研究開発の促進等に向けた調査研究を担うシンクタンクには、専門的な調査研究、情報収集・整理、内外の関係機関との連携等が求められる。
なお、特定重要技術の研究開発の促進にあたっては、科学技術・イノベーション基本計画や各分野の戦略等に基づく施策との整合性の確保に配慮する。
【国際経済本部】