経団連は7月1日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(漆間啓委員長)の2022年度総会を開催した。2021年度活動報告・収支決算および2022年度活動計画・収支予算を報告し、役員改選案および宇宙基本計画の実行に向けた提言(別掲記事参照)を審議・承認した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長が、宇宙基本計画の実行に向けたJAXAの取り組みについて講演した。概要は次のとおり。
■ JAXAについて
JAXAは、政府全体の宇宙航空開発利用を技術で支える中核的機関である。宇宙基本計画に基づき、安全保障、産業振興、災害監視、環境・気候変動など宇宙にかかわるすべての観点から事業を展開している。最近のトピックを五つ紹介する。
① 探査機「はやぶさ2」
「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」の試料サンプルを採取して、20年12月に地球に帰還した。現在、国内外の研究者にサンプルを提供し、太陽系の成り立ちや生命の起源などにかかわる研究に着手している。② JAXA宇宙飛行士
21年は野口聡一宇宙飛行士と星出彰彦宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し活躍した。22年は若田光一宇宙飛行士、23年は古川聡宇宙飛行士がISSに行く予定である。23年度までに、月での活動を想定して宇宙飛行士候補者数名を選定する予定である。③ 新型ロケット「H3」
わが国が自立的に宇宙にアクセスする能力を持つため、JAXAはエンジンを含むH3ロケットの重要技術を開発している。④ 地方自治体との協力
JAXAは21年度末時点で、地方自治体と69件の協定を結び、研究開発成果の利活用などで連携している。⑤ 国際協力
JAXAは60以上の国・地域と協定などを結び、衛星へのセンサの搭載や観測衛星のデータ提供などで協力している。
■ 宇宙安全保障の確保
JAXAによる宇宙安全保障の確保に向けた取り組みとして三つ紹介する。
① 海洋状況把握
政府の安全保障機関に、衛星が撮影した日本周辺海域の船舶情報や海象・気象情報を提供している。② 宇宙状況把握(SSA)
レーダーで低軌道、光学望遠鏡で高軌道のスペースデブリ(宇宙ゴミ)を観測している。23年度から、政府のSSAシステムの実運用を開始する予定である。③ 準天頂衛星システム
23年度の準天頂衛星7機体制の構築に向け、JAXAは19年4月から測位信号精度の大幅な向上に資する技術実証を行っている。
■ イノベーション創出
JAXAによるイノベーション創出に向けた取り組みとして五つ紹介する。
① 革新的衛星技術実証プログラム
公募した技術の実証機会を提供しており、すでに小型実証衛星1号機と2号機を打ち上げた。22年度中に3号機を打ち上げる予定であり、15の実証テーマを選定した。② 革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム
将来の宇宙輸送システムに必要な要素技術を開発し、民間主導の開発体制を支える環境を整備する。③ 宇宙探査イノベーションハブ
宇宙産業と非宇宙産業が連携して技術を開発し、宇宙探査をテーマとした宇宙開発利用の拡大と地上での事業化を目指す。④ 新事業創出
JAXAは18年から宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)を実施しており、民間事業者が共同で技術を開発して新事業を創出している。⑤ 航空分野
航空輸送、航空利用拡大、航空産業の三つの分野で目指すべき将来像を設定し、持続可能な航空利用社会に向けた技術開発に取り組む。
【産業技術本部】