企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)は8月3日、2018年にSDGs(持続可能な開発目標)推進に関する覚書を締結した国連開発計画(UNDP)とウェビナーを共催した。
同ウェビナーには、UNDP、Japan Innovation Network(JIN)、および昨年参画した企業が登壇。内閣府からの拠出金を原資にUNDPが実施しているJapan SDGs Innovation Challenge for UNDP Accelerator Labs(以下、「チャレンジ」)の(1)概要(2)昨年の成果(3)日本企業の参画を募集する今年度のプロジェクト――の3点についてそれぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 「チャレンジ」の概要
「チャレンジ」は、UNDPが世界91カ所に展開しているイノベーション拠点「UNDP Accelerator Labs(A-Labs)」と連携し、日本企業がもつ技術、ノウハウ、人材などのリソースを開発途上国におけるSDGsの課題解決に活用する取り組みとして、20年にスタートした。
SDGsは「創りたい未来」の集合体としてゴールが示されているが、その達成方法は示されていない。企業は、バックキャスティングしつつ、イノベーションを起こしながらSDGsの達成に取り組むことを期待されている。国際標準化機構のイノベーション・マネジメント規格(ISO56002)によると、イノベーション活動とは、ビジネス機会を特定し、ビジネスモデルを創造・検証して、ソリューションを開発・導入するというプロセスを通じて、価値を生み出す活動である。同事業では、A-Labsが「機会の特定」と「ビジネスモデルの第一案」の提案を行い、その後企業はUNDPと共同で「ビジネスモデルを創造・検証」する。
今年度は、マレーシア、ブルキナファソにおける食のサプライチェーンに関する課題と、インドネシアにおける防災に関する課題について、解決に資する技術やノウハウを持つ企業を募集する(図表参照)。
対象国 | 課題 | 解決の方向性・ 日本企業に期待する技術・ノウハウ |
---|---|---|
マレーシア [食のサプライチェーン] |
遠隔地から都市部に農産物を輸送する道路状況の悪さとコスト高。遠隔地のコミュニティーにおける保存・冷蔵施設の欠如。 | 現地で調達できる材料を使った低価格の太陽熱乾燥機の開発技術。 農産物・海産物の保存・包装技術。 |
ブルキナファソ [食のサプライチェーン] |
農業が干ばつや洪水の影響を受けやすい。 農家が降雨情報にアクセスできていない。 |
降雨情報を提供するモバイルアプリ開発技術。 |
インドネシア [防災] |
地震・洪水・津波・火山噴火等自然災害が多い。 脆弱な人々が災害早期警報システムを利用できていない。 |
災害早期警報システム構築技術。 低価格のウエアラブル機器開発技術。 災害ラーニングシステム開発技術。 |
■ 20年度取り組みの概要と企業が得た成果
インド=ブロックチェーンを活用したスパイスの生産・流通管理
インドは世界最大のスパイス生産・消費国および輸出国であるものの、スパイス農家のほとんどが小規模地方農家で、気候変動、価格変動、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響を受けやすい。農家の収益が少ないことや、農家・加工業者間の情報格差といった課題の解決が求められている。インド商工省香辛料局はスパイス取引のプラットフォームを構築しているが、そこへのブロックチェーン技術の導入、およびこのプラットフォームを利用する農家向けのアプリケーション開発にあたり、NEC Indiaが技術・ノウハウを提供した。
同社は、この取り組みに参画したことで、現地のステークホルダーとのネットワークを構築すること、アーンドラ・プラデーシュ州の唐辛子取引にブロックチェーンの仕組みを導入することができた。今後、同システムの有効性の検証を進め、生産物のトレーサビリティ確保に資する持続可能なビジネスモデルの創造を目指す。将来的には対象地域や品目を拡大し、スパイス以外の取引にもブロックチェーンを導入することによって、貧困層の根絶に貢献したいと考えている。
フィリピン、ベトナム=衛星画像分析技術を活用した海洋ごみの削減
フィリピン・マニラおよびベトナム・ダナンでは、河川から海に流れ出るプラスチックをはじめとした海洋ごみの増加が問題となっている。そこで、衛星画像によるプラスチックごみ検出モデルを構築し、同モデルを使用してプラスチックごみ流出のホットスポットを特定するため、有人宇宙システム(JAMSS)の参画を得て、リモートセンシングプロジェクトを実施した。
この取り組みによりJAMSSが得た最大の成果は、社内のSDGs達成に資する事業への共感や認識が高まったことである。加えて、UNDPやJINの支援を受けながら現地関係者と円滑なコミュニケーションをとり、信頼できるビジネスパートナーと出会えたことで、イノベーションの可能性をより実感できた。今後、現地の周辺都市にも展開し、最終的には両国を拠点として世界へ広げていくことを検討している。
https://www.sdgs-ship.com/news/20210804.html
【SDGs本部】