経団連は8月19日、経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)と知的財産委員会企画部会(長澤健一部会長)の合同会合をオンラインで開催し、経済産業省競争環境整備室・知的財産政策室から標準必須特許(注)のライセンスをめぐる取引環境の整備について、また中小企業庁取引課から取引適正化に向けた取り組みについて、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 標準必須特許のライセンスをめぐる取引環境の整備
近年、標準規格の普及や当該規格に必要な技術の複雑化により、標準必須特許のライセンスに関する紛争が世界各国で生じている。そのような紛争の円滑な解決手段を検討することは、わが国産業のイノベーションを促進するうえで極めて重要である。
経産省では、今年3月から、経団連をはじめ産業界や有識者が参加する「標準必須特許のライセンスを巡る取引環境の在り方に関する研究会」において、標準必須特許のライセンス交渉をめぐる国際的な情勢を整理するとともに、わが国としての対応策について検討を重ねた。今年7月に公表された同研究会の報告書では、ライセンス交渉過程に関して、透明性や予見可能性の向上を通じて適正な取引環境を実現するため、国際的な動向も踏まえつつ、政府として、権利者と実施者双方が則るべき誠実交渉のルールを迅速に検討し、対外的に発信していくこととした。
■ 取引適正化に向けた取り組み
わが国では企業間決済の手段として約束手形が長らく利用されてきた。支払いサイトの長期化、紙の作成コスト・紛失リスクの大きさ等の理由から、振出側・受取側双方において大半の企業が利用をとりやめたいと考えているものの、業界の商慣習等がその妨げになっている。業種特性も踏まえながら、産業全体で利用を廃止する必要があることから、各業界に対して、「自主行動計画」の策定・見直し、ならびに2026年までに業界内での手形利用の全面的廃止を要請している。あわせて、金融業界に対しても、電子的決済手段の利便性向上・普及促進などを進めることとしている。
また、大企業と中小企業による新たな共存共栄関係の構築に向けて、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推進している。これは、各企業の代表者名で、(1)サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携(2)下請中小企業振興法に基づく「振興基準」の遵守――に重点的に取り組むことを宣言するものである。すでに8月中旬までに約1300社が宣言を公表したが、今年度中2000社の目標に向け、経団連会員企業にも一層の協力をお願いしたい。
受注側から発注側への適正な価格転嫁は、経済全体の足腰を強めるうえで重要である。しかし、依然として発注側から一方的に原価低減を要請しているほか、受注側から発注側に対して価格交渉を申し込むことすら難しいのが実態である。労務費や原材料費等の上昇などが下請価格に適切に反映されることを促すため、今年9月に「価格交渉促進月間」を実施し、発注側への周知、受注側へのアンケートや下請Gメン(取引調査員)によるヒアリングなどを実施することとしている。
(注)標準必須特許=標準規格で規定された機能等を実現するうえで必須の特許
【経済基盤本部】