経団連自然保護協議会(二宮雅也会長)は7月29日、エリザベス・マルマ・ムレマ国連生物多様性条約(CBD)事務局長との懇談会をオンラインで開催した。
生物多様性をめぐっては、昨年10月に予定されていた生物多様性条約第15回締約国会議(CBD・COP15)において、2020年を目標年とする「愛知目標」の後継となる「ポスト2020生物多様性枠組」が採択される予定であった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、同会議そのものが延期されており、引き続きCBDの場で交渉が行われている。
また、ムレマ事務局長は今年6月、生物多様性にかかる企業情報開示を目指すTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の共同議長に就任した。
懇談会では、経団連から日本企業による先進的な取り組みを紹介するとともに、「ポスト2020生物多様性枠組」の交渉動向やTNFDの動向等をめぐり意見交換した。
冒頭、二宮会長は、経団連自然保護協議会の活動実績として、経団連自然保護基金を通じた途上国等への支援、国際自然保護連合(IUCN)をはじめとする国際NGOとの長期の信頼関係の構築に加え、CBD・COP9以降のCBD・COPへの参加等について説明。また、経団連生物多様性宣言の策定と普及・浸透を通じて、日本経済界の生物多様性の主流化を推進してきた旨を強調した。そのうえで、「日本経済界を含め各国関係者が生物多様性の保全に向けて尽力してきたにもかかわらず、状況は深刻さを増している」と指摘。政府をはじめ他のステークホルダーが経済界と一体となって生物多様性に取り組むことができる「ポスト2020生物多様性枠組」の構築を求めた。さらに、TNFDの動きに注目しており、同協議会として、実効ある枠組み構築のために貢献していきたいとの意向を表明した。
ムレマ事務局長は、「100を超える日本企業が結集し、国内のみならずグローバルレベルで生物多様性の損失を止めて回復させる努力をしていることに感謝する。生物多様性保全の取り組みにおいて、経済界や金融界の関与と役割は特に重要である。基金による1500を超えるプロジェクトの多くが途上国で行われていることは生物多様性にプラスになるものであり、このような活動が続くことを期待する」と謝辞を述べたうえで、CBD・COP15とあわせて開催を検討している「ビジネスと生物多様性フォーラム」への同協議会の参加を呼びかけた。「ポスト2020生物多様性枠組」の交渉見通しについては「当面オンラインで交渉を進めるが、締約国の間ではやはり対面交渉で完結させたいという意向が強い」と述べた(注:同会合終了後、CBDは、COP15の会期を今年10月〈オンライン〉と22年4-5月の2回に分けることを決定。後半の会期は対面で開催し、「ポスト2020生物多様性枠組」の採択を目指すと発表した)。
また、ムレマ事務局長はTNFDについて、「公式作業の開始は9月になる。23年には金融機関や企業向けのガイダンスやツールの整備を目指す。自然に関する企業の財務リスクをアセスメントするだけでなく、持続可能な経営、自然環境にプラスになる事業活動への転換を進める機会とすることを期待している。TNFDは、あらゆる企業の関与と貢献を期待している」と述べた。
次に、饗場崇夫経団連自然保護協議会企画部会長が「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」について説明するとともに、日本企業の先進的取り組み事例として大成建設、三井住友信託銀行、キヤノンの3社の取り組み事例を紹介した。ムレマ事務局長は、「各企業の非常に興味深い取り組みを聴くことができた。生物多様性保全を事業のなかに取り込もうとしていることはすばらしい。これらの取り組みが日本を超えて世界に広がり、世界各国の手本となることを期待したい」とコメントした。
【環境エネルギー本部】