経団連は3月18日、環境安全委員会環境リスク対策部会(末次稔部会長)をオンラインで開催し、環境省の山本昌宏水・大気環境局長から、環境リスク行政の重要課題について聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 閉鎖性海域の水環境改善~総量削減の見直しへ
閉鎖性海域である東京湾・伊勢湾・瀬戸内海の水質汚濁防止を目的とし、これまで5年ごと8次にわたり、指定項目の陸域からの汚濁負荷を削減する「水質総量削減」を実施してきた。
第9次水質総量削減のあり方については、昨年から中央環境審議会(中環審)で検討されている。産業系に関しては新たな負荷削減を求めず、生活排水対策に力点を置く内容で、専門委員会報告が取りまとめられ、中環審から答申がなされる予定である。
答申を踏まえ、2021年度に総量規制基準および総量削減基本方針を策定し、周辺事業所への排水規制に反映する。
また、水域に応じたきめ細かな取り組みへの移行に向け、総量削減の枠組みの見直しも視野に入れた検討を早急に進め、総合的な水環境改善対策へ転換する。
閉鎖性海域のうち、瀬戸内海については、今国会に瀬戸内海環境保全特別措置法の改正法案を提出している(2月26日閣議決定)。栄養塩類の不足が原因とされるノリの色落ちなどに対処すべく、栄養塩類管理制度を創設し、関係都府県知事が策定する計画に基づき、特定の海域への栄養塩類供給を可能とする。
■ 新たな水質環境基準
16年に底層溶存酸素量を新たな環境基準とした。類型指定に向けて、専門家会合で検討を進める。
また、有機フッ素化合物のPFOSおよびPFOAを昨年、要監視項目に位置付けたほか、これらの代替物質となるPFHxSを要調査項目に位置付け、環境中での実態把握に努めていく。
■ 農薬登録基準
18年の農薬取締法の改正により、動植物に対する農薬の影響評価の対象を、従来の水産動植物から陸域を含む生活環境動植物に拡大した。また、21年度から、すべての農薬の安全性を最新の科学的根拠に照らして定期的に再評価する制度を開始する。
■ 石綿(アスベスト)の飛散防止
昨年の大気汚染防止法改正により、今年4月から、レベル3建材(石綿含有成形板等)を加えたすべての石綿含有建材を規制対象とする。また、22年4月から、石綿含有建材の有無にかかわらず、都道府県等に対する事前調査結果の報告を義務付ける。事前調査結果の報告のための電子システムの構築など、円滑な施行に向けた体制整備を進めている。
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その後の意見交換では、経団連側から環境省に対し、報告に盛り込まれた水質総量削減の枠組みの見直しを着実に実施すべきだとの指摘があり、山本局長は計画的に進めると回答した。
【環境エネルギー本部】