経団連は15日、提言「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて~主要国別関心分野ならびに課題2016」を発表、関係各方面に建議した。
1.提言の趣旨・目的
政府は2020年をめどにインフラ輸出を30兆円に拡大することを成長戦略の柱に据え、これを具現化するために毎年、「インフラシステム輸出戦略」を策定し、インフラ海外展開に取り組んでいる。実際、インドの高速鉄道での日本方式の採用など、わが国は受注実績をあげている。
他方、国際的なインフラ受注競争が熾烈になるなかわが国が受注を伸ばすためには、民間資金の呼び水となる円借款、JICA海外投融資、JBIC投融資等を有効活用することが重要である。あわせてホスト国側においても、入札をはじめとする関連制度の整備やわが国の規格・技術基準の普及が不可欠である。
このような観点から経団連では13年から、会員企業へのアンケート調査をもとに、わが国ならびにホスト国に求められる制度改善のあり方を提言している。
2.インフラ受注拡大に向けた課題
政府は「経協インフラ戦略会議」の司令塔機能を強化し、省庁連携のもと、次の点を重点的に取り組むべきである。
円借款
一部の国では、対外債務を回避する観点から円借款の利用に慎重な傾向がある。そのため、対象案件や利率など、相手国にとって魅力ある内容とするとともに、周辺インフラの一部を無償資金協力で整備するなど、収益性確保のための措置をパッケージで提供することが求められる。JBIC投融資、NEXI貿易保険
インフラ整備にかかわる出融資機能については、対象の拡大が求められる。特に電力や都市交通の分野でのインフラ需要が見込めるパキスタン、核関連の制裁解除によって今後受注競争が展開されるイランについて、JBIC(国際協力銀行)の投融資を供与すべきである。NEXI(日本貿易保険)の貿易保険については、米国との国交回復によってわが国企業の進出、インフラ投資が見込めるキューバに対する保険枠拡大が求められる。ホスト国における制度改善
日本企業の優位性が正当に評価されるよう、価格のみならず品質、技術力、ライフサイクル、コスト等を総合的に評価する入札制度を各国に定着させることを提言。あわせて本邦技術に基づいて案件が発注されるよう、専門家の派遣等を通じて案件形成の段階からわが国の技術基準・規格を浸透させることを提言した。
3.過去の事例の検証
政府はインフラ輸出に関する過去の事例を検証のうえ、教訓・課題を整理し、今後の受注に活かす方針である。そこで提言では、インフラ海外展開のための既存のメニューがどの程度活用されているのか、活用されていないとすれば要因は何かなど、企業の意見を踏まえ必要な制度改善を行うことが重要であるとしている。「経協インフラ戦略会議」が主導し、PDCAサイクルを回すことで検証結果が受注獲得に結びつくように取り組むことが求められる。
4.安全対策
今年7月のバングラデシュにおけるテロ事件のように、インフラ事業に携わる邦人が犠牲となる事例が相次いでおり、安全対策が喫緊の課題である。提言では、顔・指紋認証や行動検知・監視等に関する最先端技術の提供など、日本企業の貢献のあり方等について言及している。
5.主要国別関心分野ならびに課題
提言では、アジア、中東・北アフリカ、中南米、サブサハラ・アフリカ、ロシア・CIS、欧州、米国、豪州の地域ごとに、主要国別関心分野と課題を具体的に列記している。これらについて、経団連では二国間経済合同委員会の開催時や各国首脳との懇談の際に、相手国に提言していく。
【国際協力本部】