経団連は提言「Society 5.0実現に向けた政府研究開発投資の拡充を求める」を取りまとめ、15日公表した。世界が抱える社会課題の解決を通じた経済成長を目指す「Society 5.0」は、わが国成長戦略の中核である。10日に開催された政府の第2回未来投資会議において、安倍晋三首相からも「未来投資に向けた成長戦略は新たなステージに入る。人口が減り、超高齢化社会を迎えるなかで、新たな技術革新を活用して国民生活を豊かにする『Society 5.0』を世界に先駆けて実現していく」との発言があったところである。
そこで、こうした構想の重要性をあらためて強調するとともに、その実現に向けた政府研究開発投資拡充の必要性についてプロジェクトのイメージ、投資スキーム、体制強化策等を示した。
■ 政府研究開発投資のあるべき姿
現在、中国・韓国といった近隣諸国をはじめ米国・ドイツ・イギリスなどが、国を挙げて「第4次産業革命」等に向けた政府研究開発投資を大きく拡大している。わが国においても、「対GDP比1%の政府研究開発投資」が政府の第5期科学技術基本計画において閣議決定されており、その着実な実行が求められる。
そこで政府は、Society 5.0の実現に向け、アベノミクスの成果などを通じ2500億円程度の関連予算枠を新たに確保したうえで、内閣府総合科学技術・イノベーション会議を司令塔とした「Society 5.0実現官民プロジェクト」を実行すべきである。それにより、わが国は世界に先駆けてSociety 5.0を実現し、2020年度において計30兆円規模の付加価値を創出することができる(図表参照)。
■ Society 5.0実現官民プロジェクトの実行
Society 5.0の実現に向けては、府省・産学官・企業間のあらゆる主体が一体となった本格的なオープンイノベーションが必要である。具体的には、広範な分野で新たな基幹産業を創出するという戦略的視点に立った「Society 5.0実現官民プロジェクト」の実行を提案したい。同プロジェクトは、グローバルにも共通する社会課題から国家戦略として推進すべき10領域・計100テーマ程度の幅広い研究開発・社会実装プロジェクトを進めるものである。
なお、実行においては内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」を軸としたプロジェクトと、各省が提案するプロジェクトの2本立ての制度で進めることが有用である。また、これらを着実に推進するための内閣府内の機能強化や科学技術振興機構と内閣府の連携強化を図る。
■ 産業界の取り組み
産業界は、Society 5.0実現に向けた民間投資の拡大や革新的技術の社会実装を推進していく。特に、企業間協調の拡大、産学官の壁の突破、ベンチャー企業との連携等を重視した本格的なオープンイノベーションに、危機感を持って取り組む。また、経団連は、大学・研究開発法人に対する共同研究を通じた投資を25年度までに14年度の約3倍の規模に拡大することを目指して活動し、産学官連携等のオープンイノベーション拡大に努めていく。
【産業技術本部】