経団連のアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)は7日、東京・大手町の経団連会館で、世界有数の政治リスク専門コンサルティング会社であるユーラシア・グループのジョナサン・リーバー米国政治分析チームディレクターと懇談した。リーバー氏から、米国選挙の行方や今後の米国の対アジア政策について説明を聞き、活発な意見交換を行った。
説明の概要は次のとおり。
■ 米国大統領選挙の行方
今年の米国大統領選挙では、民主・共和両党がそれぞれ史上最も不人気な候補のもとで選挙戦を繰り広げている。ユーラシア・グループは、各党が過去の選挙で勝利してきた州、組織力、および資金力についての分析を踏まえ、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝利するとみている。新政権ではオバマ政権下の内政・外交政策の方針が概ね引き継がれるだろう。共和党のドナルド・トランプ候補は具体的な政策に言及していないが、勝利すれば、政策の不確実性が増し、貿易や通貨への影響は好ましくない。
連邦議会選挙では上院議会は民主党、下院議会は共和党が過半数の席数を獲得すると予想する。両党の問題や政策に関する意見は近年一致しておらず、このねじれ状態が立法機能を膠着させることを懸念している。
■ 米国の対アジア政策
日本は米国への直接投資額累計で英国に次ぐ第2位であり、米国の重要な戦略的・商業的パートナーだ。一方、米国と中国はこれまでで最も良好な関係にあるが、知的財産権侵害、人権問題、周辺地域の緊張の高まりなども懸念されている。
TPP(環太平洋パートナーシップ)について、レームダックセッションで承認を得るには、賛成票数ではなく、時間が足りないと心配している。TPPの発効自体には期待しているが、選挙の結果、上院で共和党が過半数議席を失い、今年中に承認されなければ、実現は2019年の中間選挙以降になるおそれがある。
■ 日米通商貿易関係の深化―日本企業への提案
日本企業は米国における模範的な企業市民であるが、ワシントンDCでプレゼンスを高めるためのロビイング活動を強化させる余地がある。日本企業が米国経済に占める重要性を鑑みれば、特にTPPのような重大な案件で、政府関係者への積極的なロビイングを躊躇する必要はない。
特に選挙キャンペーンにおいて、両大統領候補が反対する自由貿易については、非熟練労働者や低所得者にとっても有益であるということを経済界としてもっと訴える必要がある。政府には、選挙での支持や支援を行うほか、自由貿易の恩恵が適切に分配されるような政策的配慮を求めるべきだ。
【国際経済本部】