「ロシア経済近代化に関する日露経済諮問会議」は、ドミートリー・メドヴェージェフ前大統領(現首相)の提唱により2010年に設立されて以来、共同議長(日本=上月豊久駐露大使/ロシア=アルカジー・ドヴォルコヴィッチ副首相)のもとで日露間のビジネス案件等の進展に向けた議論を行い、経団連もこれまで積極的に参画してきている。
第6回諮問会議は9月19日、両国から多数の官民関係者を集め、ロシア連邦タタルスタン共和国カザン市において開催された。ロシア側議長のドヴォルコヴィッチ副首相が急遽欠席となり、スタニスラフ・ヴォスクレセンスキー経済発展次官が代理を務めるという変更はあったものの5月の日露首脳会談で安倍晋三首相がウラジーミル・プーチン大統領に提案した8項目(注1)からなる「協力プラン」も踏まえ、個別企業が直面する課題や今後の展望等について、闊達な議論が行われた。
経団連からは、日本ロシア経済委員会の橋本剛輸送部会長が参加し、スピーチを行った。概要は次のとおり。
■ 「8項目」に対する評価
安倍首相が提示した「8項目」は、日露協力の新段階を切り拓き、二国間経済関係を発展・拡大させていく土台である。経団連では6月に訪モスクワミッションを派遣した際、政府閣僚や経済界首脳との建設的な意見交換を通じて、具体的なプロジェクトにつなげる素地を構築した。
特に日本企業が注視するのは農業や水産加工、快適な都市づくりに向けた上下水道、廃棄物処理、医療分野等である。
日露官民が一丸となって「8項目」実現に動き出した今、経団連としても、年内のプーチン大統領の訪日に向けて、ロシア政府・経済界と政策対話を積み重ねながら、各種案件の実現に積極的に関与していく。
■ 日露経済関係の現状と課題
日露経済関係の現状に目を転じると、二国間貿易においては、ルーブル安によりロシア産品の価格競争力がアップしたものの、油価下落等の影響により、15年度の貿易額は対前年比38.9%の大幅減少となった。
一方で、日本の対露直接投資は、15年度は4.39億ドルへと3年ぶりに増加し(対前年比約62%増)、とりわけ非製造業分野への進出が顕著であった。ロシア市場の成熟化や消費者の多様なニーズといったポテンシャルが反映されていると思われる。
12年のWTO加盟後、ロシアはビジネス環境の整備にたゆみない努力を重ねており、その成果は投資額の飛躍的な増加にも表れている。
その一方で、経団連が取りまとめた最新のアンケート結果(注2)にあるとおり、今なお法制度や行政手続き、輸出入手続きが煩雑との指摘があることも事実である。ロシア政府には、引き続き課題の解決に取り組んでいただくよう、この機会にあらためて要望する。
(注1)(1)健康寿命の伸長(2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大(4)エネルギー(5)ロシアの産業多様化・生産性向上(6)極東の産業振興・輸出基地化(7)先端技術協力(8)人的交流の抜本的拡大
(注2)「ロシアのビジネス環境等に関するアンケート(2016年度)結果概要」の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【国際経済本部】