経団連は9月26日、アイルランドの新たな国際金融サービス戦略のプロモーションを目的として来日した同国のオーウェン・マーフィー金融サービス担当大臣との懇談会を開催した(座長=佐藤義雄ヨーロッパ地域委員長)。
大臣の発言内容は次のとおり。
■ Brexitの衝撃にも耐えうる確かな景気回復を実現
アイルランドは世界的な経済危機の影響で深刻な打撃を受けたが、堅実で一貫性のある財政・経済政策を実施した結果、いまや力強い景気回復を実現している。2012年のピーク時には15%超だった失業率は8%まで低下し、16年のGDP成長率は約5%となる見込みである。
英国の国民投票の結果により、経済の見通しに関し不透明性が高まっているが、アイルランドは、この衝撃にも耐えられるだけの確かな基盤を築いてきたといえる。われわれは今後もEUの一員であると同時に、英国との良好な二国間関係の維持に努めていく。英国の離脱交渉の行方は国際社会にとって大きな関心事であり、その意味で、先般日本が公表した「英国及びEUへの日本からのメッセージ」の明確性を高く評価したい。
アップル社に関する先般の欧州委員会の決定について、支払われるべき税金は全額支払われており政府補助の提供はないというのがわれわれの一貫したスタンスである。欧州委員会の決定は到底受け入れられるものではなく、欧州司法裁判所に控訴せざるを得ない。アイルランドはOECD・BEPS(税源浸食と利益移転)の実施に積極的に取り組んでおり、こうした姿勢が納税者に長期的な安心感を与えていることを確信している。
■ さらなる競争力強化に向けてIFS2020戦略を推進
アイルランドはユーロ圏内唯一の英語国であり、国民の平均年齢が低く、高技能労働者が豊富でEU市場へのフリー・アクセスを有するなど、競争上の優位性が非常に高い。しかし現状に甘んじることなく、「IFS2020戦略」に取り組んでいる。
これは、アイルランドが国際金融サービスセクターのグローバル・リーダーになることを目指して、20年までの5年間で同セクターを30%成長させるという極めて野心的な目標である。これまでのところ順調に進展しており、日本の金融サービスセクターの皆さまには、アイルランドを欧州へのゲートウェイとして活用してほしい。
【国際経済本部】