経団連は12日、藤崎一郎日米協会会長との懇談会を開催した。当日は、石原邦夫副会長・アメリカ委員長、友野宏副会長、土橋昭夫カナダ委員長をはじめ約50名が出席し、2008年から12年まで駐米大使を務めた藤崎会長から日米関係全般について説明を受けた後、活発な意見交換が行われた。説明の概要は次のとおり。
経団連では昨年に続き、今年も米国にミッションを派遣するとのことだが、同ミッションが、首都ワシントンDCだけでなくいくつかの州も訪問する予定であるのは意義深い。米国は州ごとに様相が異なり、ワシントンDCだけをみても米国の実情を理解することはできない。
私自身も先月、米国を訪れた際、まさにそうしたことを実感した。共和党の大統領候補指名が確実になったトランプ氏について、ワシントンDCで会った人々からは誰一人肯定的な話が聞かれなかった一方で、それ以外の場所では「彼の主張はわかりやすくてよい」との意見も聞かれた。トランプ氏の意見には、現実にめちゃくちゃな面もあるが、米国の外交や通商政策は他国を利すると同時に米国も利しているという議論が、米国内できちんとなされていない点も問題であると考える。いずれにせよ、大統領選挙については、当事国以外は余計な発言をせずに見守るほうがよい。
今後の課題として、TPP(環太平洋パートナーシップ)、米中関係、北朝鮮への対応、日米関係について述べたい。TPPについては、いわゆるレームダック・セッションで承認されないとかなりまずい事態になる。アジア太平洋地域におけるルール形成に、米国が関与できる機会が縮小することが懸念される。この点は、ミッションで米国の連邦議員や政府関係者にきちんと伝え、早期承認を働きかける方がよい。
米中関係は、今後も接近したり離れたりと、振り子のように動くだろう。また北朝鮮の最近の一連の行動は、米国を対話の場に呼び込むためではなく、時間稼ぎのためととらえるべきである。
最後に日米関係について、先日私がハフィントン・ポストに寄稿した記事を紹介する。ここでは、(1)日本が安全保障において米国に「ただ乗り」しているとの認識は誤っている(2)米国の貿易赤字に占める対日貿易赤字の割合は1980年代の7割から1割弱にまで低下している。日系企業は米国で70万人以上を直接雇用しており、間接雇用を含めて米国経済に大きく貢献している――ことを主張した。ミッションの際、経団連からもこれらの点を米国側に伝えてはどうか。
【国際経済本部】