経団連は4月19日、報告書「ダイバーシティ促進に向けた取組み事例集」を公表した。同報告書は大企業に比べて人材の確保や定着、育成の面で制約や苦労が多い中堅・中小企業が多様な人材の活躍推進を図る際の参考となるよう、起業・中堅企業活性化委員会人材活躍推進部会を中心に取りまとめたものである。
「女性」「障がい者」「若者」の活躍に向けた効果的な取り組みについて、業種や規模、地域など多種多様な27の企業事例を収録している。いずれも各社の実情を踏まえた独自の工夫がこらされており、中堅・中小企業ならではの特徴を踏まえたものとなっている。
女性の活躍に向けた取り組みでは、ダイバーシティの推進を担う専門部署を置くことが難しいなか、部門横断のプロジェクト形式により、職場や社員の状況にかなった制度の構築と運用に取り組んでいる例を収めている。また、経営層との距離の近さを活かし、社長との意見交換会の開催や自己申告書の提出などによる直接対話を通じて課題解決を図っている例も取り上げた。
障がい者の活躍に向けては、多くの中堅・中小企業が障がい者雇用に踏み出せずにいるなか、公的機関等の支援も受けながら、採用・定着に向けた諸課題を解決し、初めての障がい者雇用を計画的に実現した事例を収めている。また、採用後の能力等の向上に向けて、業務プロセスや指示書・マニュアル等の改善に取り組んでいる事例も紹介している。
若者の活躍に向けた取り組みでは、早期離職の予防が経営上の課題との指摘があるなか、定着に向けて、内定者研修を工夫している例を掲載した。具体的には、内定者研修の初日に携帯電話を「没収」し、直接的なコミュニケーションの機会を増やすことで、仲間意識の醸成に取り組む事例を紹介している。また、若手社員を新入社員のメンターや会社説明会・展示会等における説明者として抜擢することで、やりがいを実感できる機会を積極的に設けている事例も掲げた。
これらのほかに、中長期的な視点から、自社への就職希望者の拡大に取り組む例もある。子ども向け職業・社会体験型施設「キッザニア甲子園」への出展をはじめ、近隣の学校向けに建設現場等の見学会を実施している例も登載した。
いずれの取り組みも、中堅・中小企業がダイバーシティの促進を図るための示唆に富んだ内容となっており、今後、経団連ではさまざまな機会をとらえて、事例集を活用した情報提供を図っていく。
※報告書の全文は経団連のウェブサイトに掲載
【労働政策本部】