経団連の日本ロシア経済委員会(朝田照男委員長)は15日、東京・大手町の経団連会館で、日本政府が日ロ経済交流促進を目的としてロシア国内6カ所に設置した日本センターの各所長との懇談会を開催した。任地の経済情勢や日本企業への期待等に関する各センター所長の説明の概要は次のとおり。
■ 濵野道博 モスクワ所長
当センターの主な活動の柱は(1)ビジネスマッチング(2)研修事業(3)日本語講座――等であるが、経団連が昨年12月に公表した提言「日ロ経済関係の基本的な考え方」を読み、日本センターによるロシアのビジネス環境に関する情報提供が不十分であることを痛感している。以前に比べ法制度の透明性は格段に向上しており、基本情報はウェブサイト上で公開されているが、ロシア語以外では閲覧できない情報については、適宜翻訳などで協力したい。また、研修事業に関しては、ロシア政府が費用負担する訪ロ研修制度があるので、若手社員の育成に活用してほしい。
■ 松原斉 サンクトペテルブルク所長
当地は自動車をはじめ、日本企業の生産基地という側面が強い。現在、自動車産業を中心に進出している日本企業60社のうち24社が邦人駐在員を派遣している。昨年は厳しい経済環境にもかかわらず、食品や小売など3社が新規に進出した。ロシアのなかでもとりわけ高い親日度も勘案して進出を検討いただきたい。
■ 佐竹昭彦 ニジニー・ノヴゴロド所長
ロシア経済専門紙の調査結果によれば、当地域は投資潜在性がモスクワ、サンクトペテルブルクに次いで高い。これを反映してか、自動車の売り上げが落ち込むなか、昨年は日本の自動車部品メーカー2社が生産拠点を開設するという明るいニュースがあった。日本ではなじみがないかもしれないが、当地域は自動車や機械、航空・宇宙など工業が盛んな土地柄である。ロシアが資源依存型経済構造からの脱皮を図るなか、ポテンシャルは大きい。
■ 鏡芳和 ハバロフスク所長
当地ではこの1年で潮目が変わった出来事がいくつかあった。第1に日ロ合弁による温室野菜栽培事業の立ち上げ、第2に外食産業の栄枯盛衰、第3に住宅価格の下落である。こうしたなか、当地の日本に対する期待や尊敬の念は変わらないため、既述の日ロ合弁事業を誘い水として、多くの日本人に当地をご覧いただきたいと思う。
■ 河原和尊 ウラジオストク所長
当地ではプーチン大統領出席のもと、昨年初めて開催された東方経済フォーラムが今年も9月に開催される予定である。また、経済特区を中核としたインフラ整備や外資誘致も積極的に展開されている。
一方、昨年9月には初のジャパンデーが開催され、2日間で1500名もの来場者が物産展や日本文化を楽しむなど、日本の人気の高さをうかがわせた。
■ 山本博志 サハリン所長
当地と日本とのビジネスは石油・天然ガスなどエネルギー資源に大きく偏っており、加工産業は水産分野しか存在しない。こうしたなか昨年10月に北海道庁と北海道企業が約90名のミッションを派遣するなど、北海道とサハリン州の関係は極めて良好である。今後、水産、農業、観光の分野で経済の底上げを図る当地にもぜひ注目してほしい。
【国際経済本部】