経団連は12月10日、東京・大手町の経団連会館で通商政策委員会(伊東信一郎委員長、中村邦晴委員長)を開催した。外務省の金杉憲治経済局長から、わが国の経済連携(EPA)戦略と世界の通商交渉の動向について聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ メガFTA時代のEPA戦略
WTOドーハ・ラウンドの停滞を受けて、(1)TPP(環太平洋パートナーシップ)協定、(2)RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、(3)日EU EPA、(4)TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)――の4つのメガFTAが始動し、メガFTA時代が到来している。
わが国の基本戦略は、2018年までに貿易総額に占めるEPA比率70%の達成に向け、TPPの早期署名・発効、日EU、RCEP、日中韓FTA等、交渉中のEPAを同時並行で戦略的かつスピード感をもって推進していくものである。発効済・署名済みのEPA比率は現在22.3%、大筋合意に至ったTPP協定発効後は、37.2%まで上昇する。
わが国はEPAへの取り組みに後れを取ったが、メガFTA3つ(TPP協定、日EU EPA、RCEP)に参加している。すべて成功すれば、通商交渉上の立場は非常に強くなる。韓国はEU、米国とのFTAをはじめ、わが国に先行し、発効・署名済みのFTA比率は62.5%だが、それでもTPP協定への参加に強い関心を示している。これは、幅広い分野の新たなルール構築というTPP協定の意義の大きさの表れである。
なお、もう1つのメガFTAである米EU間のTTIPは、TPP協定と同様の高い自由化を目指すものの、米欧の考え方の違い等から難航している。米大統領選挙期間中には政治決断を必要とする大きな進展が期待できないことから、妥結は17年以降が現実的といわれている。
■ 各交渉等の現状と見通し
TPP協定は、現在参加国が英文テキストの法的整合性を確保する作業を進めている。わが国では16年通常国会に提出可能となるよう、日本語仮訳の作成作業と内閣法制局の審査を行っている。米国の国内手続きを踏まえ、協定参加12カ国が署名可能な最短の日程は2月3日以降であり、署名後早期に国会審議をお願いしたいと考えている。注目される米国議会の審議開始時期としては、16年夏前か次期大統領選挙後のレームダック・セッション、難しければ17年の次期政権発足後の3つの可能性があるが、早期の議会承認を期待する。
その他のEPAについては、日EUは15年11月のG20サミットで両首脳が16年のできる限り早い時期の実現を目指すことで一致した。米EU間のTTIP交渉で難航する課題(投資家対国家の仲裁、越境データ流通の円滑化、地理的表示等)について、日EUでも難しい状況にあるが、交渉努力を続ける。日中韓は、15年11月の首脳会議で交渉加速化に合意しており、関税撤廃率が低い水準にとどまった中韓FTAよりも高いレベルを目指す。
WTOのドーハ・ラウンドは難航しているが、協定の履行監視ならびに紛争解決制度は機能している。また、ルール形成の機能を補完するかたちで、情報技術協定(ITA)や新サービス貿易協定(TiSA)、環境物品協定(EGA)交渉等、有志国・複数国間交渉(プルリ)を推進しており、12月のナイロビ閣僚会議での成果が期待される。
ラテンアメリカ、アフリカを中心に投資協定等の締結も加速していく。
【国際経済本部】