経団連と経団連事業サービスは25、26の両日、東京・大手町の経団連会館で「第119回経団連労使フォーラム」を開催した。企業経営者や人事・労務担当者ら約270人が参加、「人口減少に対応した人事・人材戦略」をテーマに春季労使交渉・協議の重要課題への対応策を探るとともに、企業における人事・人材戦略、組織を活性化する働き方改革などの報告を踏まえて、今後の企業のあるべき姿や方向性について幅広い討議を行った。
開会あいさつで榊原会長は、今年を「デフレ脱却宣言の年」「2020年GDP600兆円の実現に向け、しっかりとした道筋をつける年」にしなければならないと指摘し、経済界としても経済の好循環の歯車を再度、力強く回していく取り組みが必要であると強調した。そのうえで企業経営者は、デフレマインドから脱却し、積極果敢な経営の推進を通じて企業収益を拡大し、その成果を設備投資や研究開発投資、雇用の拡大などとあわせ、賃金の引き上げへとつなげていくよう、最大限努力してほしいと求めた。
一方、「採用選考指針」の改定経緯を説明し、会員企業に指針の遵守と学生の事情に十分配慮した採用活動を行うための社内体制の整備を呼びかけた。
次にみずほ総合研究所常務執行役員チーフエコノミストの高田創氏が「2016年・日本経済の行方」について、新興国経済の調整リスクや「原油安経済」の到来等、今後の世界経済の動向を解説したうえで、経済・財政再生計画における集中改革期間の最終年である2018年に向け、今年はアベノミクス再起動の正念場になると述べた。
経労委報告の解説に続き、日本郵船会長の工藤泰三氏、日産自動車副会長の志賀俊之氏、慶應義塾大学大学院商学研究科教授の鶴光太郎氏が人口減少社会における人事や人材戦略などをめぐり鼎談を行った。鼎談では、女性活躍推進の具体策やキャリア形成の課題、IoT・AI活用による生産性革命の姿、雇用流動化や人材マッチングの重要性、地方創生の可能性等、幅広い議論が展開された。
1日目最後に連合の神津里季生会長が「持続可能な社会をめざして」をテーマに講演。2%程度の賃金引き上げを求めるとともに、中小企業の賃上げの拡大など、産業全体の底上げ・底支えや格差是正に引き続き取り組むとの方針を表明した。
2日目には、新日鐵住金、パナソニック、アステラス製薬の労務担当役員、また電機連合、自動車総連、UAゼンセンの各産別労組リーダーが「今次労使交渉に臨む方針」を発表した。
続いて「組織を活性化する働き方改革」をテーマに、三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の矢島洋子氏の進行のもと、SCSK、王子マネジメントオフィス、東京海上日動火災保険の人事労務担当役員らによるパネルディスカッションを行った。各社が取り組む改革の具体的な内容とその効果、取り組みを進めるうえでの障壁やこれを乗り越えるための工夫や仕掛けなどについて討議した。
最後に三菱航空機執行役員コーポレート本部長の岩佐一志氏が「MRJを世界の空へ」をテーマに特別講演を行った。
【経団連事業サービス】