経団連は提言「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて」を取りまとめ、17日に公表した。
今年5月には安倍首相が「質の高いインフラ・パートナーシップ」を提唱するなど、わが国はインフラ海外展開を成長戦略の柱に位置づけ、官民連携のもと取り組んでいる。他方、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の発足等により、資金調達の選択肢が多角化するなか、わが国が受注を伸ばすためには、政府の「経協インフラ戦略会議」の司令塔機能を強化し、民間のニーズを十分踏まえつつ、技術とファイナンスを適切に組み合わせていく必要がある。あわせて、ホスト国側においても、入札をはじめとする関連制度の整備が求められることはいうまでもない。
経団連では、2013年から会員企業へのアンケートをもとに提言を取りまとめ、インフラ輸出に際して現地で直面する課題ならびにわが国が取るべき対応について関係各方面に働きかけている。今般、会員企業約60社、延べ150案件の回答を踏まえ、15年度版の提言を取りまとめた。ポイントは次のとおり。
■ 重点地域
世界の成長エンジンであるアジアにアンケート回答の8割が集まった。インドネシア、ベトナム、インド、ミャンマーに引き続き高い関心が寄せられたほか、インドとメコン地域の間に位置するバングラディッシュへの関心が昨年にもまして寄せられている。
脱石油依存に向けて産業振興や再生可能エネルギーの開発、さらには人材育成に力を入れている湾岸諸国ならびに中東と欧州の結節点であるトルコが挙げられた。
中南米については、昨年安倍首相が訪問したブラジル、メキシコ、コロンビア、チリ等が引き続き関心国として挙がった。加えて今回は、米国との国交を回復したキューバにも関心が寄せられているのが特徴となった。
このほか、日本企業が進出しているアフリカ主要国、そして、資源開発、通信、高速鉄道、環境等の分野でわが国の技術が活かせる米国、ロシア・NIS、欧州等のいわゆる先進国が関心地域として挙げられた。
■ ホスト国やわが国に求められる課題
(1)民間資金を活用した電力、通信、物流等の基幹インフラならびに、中小企業の進出拠点となる工業団地の整備。
とりわけ電力については、欧米諸国が石炭火力発電の支援に消極的ななか、日本の高効率石炭火力発電技術の普及によって成長基盤の確立と環境保護を両立させる必要があるとの意見が極めて多かった。(2)民間資金の呼び水となるJICA(国際協力機構)の海外投融資、国際協力銀行の出融資の拡充や相手国にとって借りやすい低利・長期の円借款供与。
(3)相手国の入札制度について、価格のみを評価対象とするのではなく、技術や納期の遵守などを評価する制度整備の働きかけ。
(4)わが国が強みを持つ分野を中心としたトップセールスの展開。
※提言の全文は経団連ウェブサイトに掲載
【国際協力本部】