経団連は20日、東京・大手町の経団連会館で約480名の参加者を得て、第14回企業倫理トップセミナーを開催した。
開会にあたり榊原定征会長は「企業が社会からの信頼を得て持続的な成長を図っていくには、経営トップ自らが先頭に立って企業統治体制を確立し、企業倫理の徹底に向けた取り組みを行うことが不可欠。経団連の企業行動憲章等を参考にグループ企業も含めた事業活動全般の総点検をお願いしたい」とあいさつした。
続いて、中島経営法律事務所の中島茂弁護士が「実効性あるガバナンス確立のために」と題して講演を行った。講演の概要は次のとおり。
■ 経営者のミッション ― 目的・手段ともに「適正」な利益の獲得
株式会社は、株主が資金を出し合い、経営者に事業展開を委ね、その利益を配当として受け取るシステムである。株主が関心を持つ、「配当」「株価」「情報開示」の3つに応えていくのが経営者の責任である。
会社が利益を上げることに対して否定的な論調が示される場合があるが、利益を上げることは会社の目的に沿うものである。ただ、目的・方法ともに「適正」に利益を上げることが必要である。
「目的」が「適正」であるとは、CSR経営、すなわち安全・安心で優れた商品・サービスの適切な価格での提供、企業倫理の確立・遵守といった社会の期待に応え、社会に貢献していくことである。経営者には、どのように社会に貢献するかのビジョンを示すことが求められる。
「方法」が「適正」であるとは、コンプライアンス経営の実践である。コンプライアンスとは、法令遵守にとどまらず、社会の期待に応えていくことであり、例えば商品の安全・安心について消費者が法令以上に高いレベルを求めている場合など、経営者には社会の期待、要請を敏感に感じ取ることが求められる。
■ 適正な利益獲得に向けた内部統制・ガバナンスの確立
目的・手段ともに適正な利益を獲得するためには、内部統制の確立が必要である。内部統制とは、経営トップの方針を組織の隅々にまで徹底することである。よく誤解されているが内部統制という言葉それ自体は、社会貢献、コンプライアンスといった価値観を含んではいない。そこに価値観を吹き込むのが経営者の役割である。
内部統制確立のための手段としては、社内規則や命令体系の明確化、監査の充実、研修の実施が挙げられるが、経営者にはどのような内部統制を実現していくかを示すことが求められる。
日本の企業文化においては、現場が経営層の考えを察する「お察し経営」が行われていることが多々ある。これ自体は日本企業の強みともいえるが、「お察し経営」の結果として不祥事が生じる場合がある。経営者には、その一挙手一投足が常に社内外からみられていることを自覚し、自らがコンプライアンスを実践で示すことが求められる。
また、経営者自らが間違いを犯す可能性もある。経営者は自らをチェックする必要性を認識するとともに、株主や世論と真剣に向き合うこと、社外取締役、社外監査役の積極的な活用により、効果的なガバナンスを実現していくことが必要である。
昨今、グループでの管理体制の構築が求められるようになっていることも踏まえ、経営者にはグループ全体でのコンプライアンス管理という視点も求められる。
【政治・社会本部】