経団連は9月15日、東京・大手町の経団連会館で起業・中堅企業活性化委員会人材活躍推進部会(立石文雄部会長)を開催した。中堅・中小企業における障がい者雇用の促進をテーマにTOHOシネマズ人事労政部人材開発室障がい者雇用担当の塚原真樹氏から企業事例を聞くとともに、日本就労支援センターの大形利裕氏の講演を聞き、意見交換を行った。意見交換では、小グループに分かれての討議を活発に行い、各社における課題や好事例を共有した。
企業事例と講演の概要は次のとおり。
■ TOHOシネマズの障がい者雇用の取り組み
当社は合併により現在の企業規模となる過程で、障害者雇用納付金制度の対象となったことを契機に取り組みを強化した。
2008年5月に定めた基本方針のなかで障がい者雇用を経営の最重要課題の一つと位置づけ、全社員の参画のもとで推進していくことや将来的に全事業所で障がい者を雇用することなどをうたった。
基本方針をトップメッセージとして発信して以降、期間を空けずに各職場の担当者を対象とした集合研修を実施し、研修後直ちに採用活動を開始した。経営トップの指示のもと、短期間で集中的に取り組みを進めたことから、障がい者雇用への認識や理解が一気に進み、全社的な行動へとつながった。
現在は58名の障がい者を雇用し(雇用率2.78%)、そのほとんどがアルバイト社員として映画館で接客等に活躍している。
障がい者雇用の推進にあたり、接客が苦手な場合、現場の業務に変更があった場合のマッチングなど問題点は少なくないものの、採用前の体験実習で仕事内容や職場を確認してもらうことで、問題解決に取り組んでいる。
障がい者雇用には失敗がつきものだが、経験から学び、常に新しい発想を持ってこれからも推進していきたい。
■ 障がい者就労支援の実践から企業の障がい者雇用を考える(日本就労支援センター)
障がい者雇用の推進には障がい者を特別視して別枠とするよりも、通常の人事管理のなかで「丁寧に」「柔軟に」対応する視点が大切である。障がい者雇用をうまく進めている企業では、採用時に障がいの種類で選考するのではなく、人となりを見極めるために面接を重ねている。
また、採用後には一人ひとりのキャリアを大切に考え、育成プランに基づいた教育訓練を通じて職域の拡大等を図るとともに、わかりやすい表現を用いながら丁寧に評価を行っている。さらに、働く時間や環境を障がい特性などにあわせて柔軟に設定している例も多い。
障がい者の受け入れにあたってのポイントは、部署レベル、全社レベルの取り組みとすることである。担当者による属人的な対応とすると、異動のタイミングでノウハウの共有や障がい者との人間関係の構築の面で問題が起きやすい。継続的な取り組みを目指すうえでは組織的な推進体制とすることが欠かせない。
このような取り組みを円滑に進めていくために、就労支援機関をうまく活用してほしい。就労支援機関は障がいの特性をよく理解し、さまざまな事例も蓄積しており、障がい者を雇用する際の外部資源としての役割を果たすことができる。また、障がい者の訓練を行い、企業等へ送り出す役割を担っていることもあり、労働市場側のパートナーとして、企業側の人材育成に関する要望を受け止めることもできる。こうした特徴を活かしながら、企業における障がい者雇用の推進に向け効果的なサポートを続けたいと考えている。
【労働政策本部】