経団連は9月28日、東京・大手町の経団連会館で雇用政策委員会国際労働部会(得丸洋部会長)を開催した。労働政策研究・研修機構の中村良二主任研究員から、中国進出日系企業の人事管理上の課題について、東京大学北京代表所の宮内雄史所長から、中国の大学および留学生の動向について、それぞれ説明を聞いた。
説明の概要は次のとおり。
■ 中国進出日系企業の人事管理上の課題
労働政策研究・研修機構では、中国に進出する日系企業が直面する雇用労働面での課題と対応策について、文献調査と現地調査に基づき、今年5月に報告書をまとめた。
中国・大連でのヒアリング結果によれば、日系企業のうち、いまだ半数は事業を拡大する一方、事業を縮小、撤退する企業も増えている。この一因として、人件費の高騰や地方政府による優遇施策の撤廃などがある。
こうしたなか、日系企業は、これまでの中国での事業ノウハウの蓄積を重視して中国に残るか、中国のコスト上昇に対応して東南アジアなど海外に移転するかの選択を迫られている。中国に残るとしても、コスト削減には、人員の削減・縮小や生産の自動化等が必要となり、より協調的な労使関係の構築が求められる。
人事管理面での昨今の動向をみると、コスト削減のため、日本からの派遣人員の削減とともに、現地化が一定程度進みつつある。景気低迷等により、現地の正社員の定着も進んでいる。一方で、中国の優秀な人材は、国家官僚、続いて欧米系・地場企業へと就職し、日系企業の相対的な位置づけは低下しつつある。
日系企業は今後、現地従業員の育成等の現地化、日本本社の現地への指示体制の整備や権限の分担などに戦略的に対応していく必要がある。
■ 中国の大学および留学生の動向
中国の大学の入学者は、1990年以降急拡大し、現在、毎年約700万人に上っている。同時に、世界の大学のなかで、北京大学、清華大学などをはじめ大学のレベルも向上している。81~95年生まれの団塊の世代を例に取れば、大卒者が20~30%を占めるなど、今後、膨大な知的労働者を輩出し、中国経済の知的高度化へと貢献することになろう。また、中国人の海外留学生も2000年以降、急激に増加しており、14年には約109万人に達している。北京大学や清華大学等の中国のトップ大学では、学部卒業者の3割近くが留学する。また、欧米、アジア各国の外国人留学生をみても、中国からの留学生が相当数を占めるとともに、各国から中国への留学生も近年大幅に増加している。こうした状況は今後、中国と各国との結びつきの強化へと直結する。
今後、日中双方の留学生の往来や文化交流を進めることで、日中間の人的交流を促進していく必要がある。
【国際協力本部】