経団連の環境安全委員会(木村康委員長、徳植桂冶委員長)は8月28日、東京・大手町の経団連会館でジーナ・マッカーシー米国環境保護庁(EPA)長官一行との朝食懇談会を開催し、米国政府が8月3日に発表した気候行動計画「クリーン・パワー・プラン(CPP)」を中心に、米国の環境政策や石炭火力発電所への規制について、説明を聞くとともに意見交換を行った。
経団連からは木村委員長、徳植委員長らが出席し、日本の産業界による温暖化対策に関する自主的な取り組みを説明するとともに、米国が求める新設石炭火力発電所への公的金融支援の規制について、「高効率石炭火力の普及を通じた地球規模の温暖化対策を阻害する」との懸念を伝えた。
マッカーシー長官の発言の概要は次のとおり。
■ オバマ政権の環境政策もイノベーションを重視
日本の産業界と同様に、米国も「イノベーションが温暖化対策のカギ」と考えている。例えば、オバマ政権は、家電や住宅など幅広い省エネ規制を導入したが、その目的はあくまで省エネ技術への投資の促進だ。まずは市場による低炭素技術の開発を支援し、新技術が経済的な価格まで下がった段階で規制により普及を後押しするといった流れが望ましいと考えている。
■ 石炭火力規制は米エネルギー部門の変革を意識
米国内において、CPPによる石炭火力規制が論争の種となっているのは事実である。しかしこの規制はシェールガス開発の進展という米国のエネルギー部門における20年来の変革を踏まえたものである。CPPがなくとも、ガス価格の低下と国内需要の減少という見通しから、国内市場において石炭火力発電所を新設する魅力はすでに失われてきている。
また、CPPの目標数値「2030年までにCO2を05年比32%削減」は、低炭素燃料へのシフトや再生可能エネルギー・省エネの導入促進によって、各州が実現可能な削減量を算出したものである。
このようにCPPは米国の事情に整合的な合理的政策であるが、同様の施策を背景の異なる他国に押しつけるつもりはない。重要なのは、低炭素社会へのシフトが可能というメッセージを発信することと、低炭素技術を普及させることである。
【環境本部】