経団連は7月28日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(中西宏明委員長、渡邉光一郎委員長)を開催した。筑波大学学長の永田恭介氏から、筑波大学の大学改革の取り組みを聞くとともに懇談した。
■ 地域社会のなかの研究型大学
永田氏はまず、同大学の特徴について、「筑波研究学園都市の中核に位置しており、50を超える国立法人や200を超える民間企業と連携して研究や教育を行うことができる」「他には例がない体育や芸術を含んだ総合大学で、ノーベル賞受賞者からオリンピアンまでの多彩な人材を輩出している」と説明。また、筑波大学として発足した際の建学の理念は、(1)国内外の教育・研究機関および社会との交流により、学際的な協力の実を挙げる(2)あらゆる意味において、国内的にも国際的にも開かれた大学とする(3)変動する現代社会に不断に対応する――など、40年以上経った現在も通用する内容であると紹介した。
■ 教育・研究改革、国際化への取り組み
続いて永田氏は、筑波大学が“地球規模課題の解決に向けた知の創造とそれを先導するグローバル人材育成”とのミッションを掲げていることに言及。2014~15年度は、(1)基礎研究力を強化し社会還元型開発研究・イノベーション創出を加速する(2)国際的互換性のある学位プログラム制を推進してグローバル人材の育成を強化する(3)ガバナンス改革により教育研究機能の基盤体制を強化する――という3つの柱を掲げていると、大学の機能の強化に向けた改革構想を説明した。
具体的には、基礎研究力強化については、先端的な基礎研究の優先支援、学長裁量経費の戦略的投入による社会還元型開発研究などにより、生活支援ロボット、次世代ガン治療、藻類バイオマス等の分野で成果を挙げていることを強調。国際化への取り組みとしては、104カ国から2000名を超える留学生を受け入れているほか、57カ国247大学/研究機関との大学・部局間連携協定を締結していること、海外著名研究者を筑波大学と海外研究機関とのクロスアポイントメントにより雇用する“海外教育研究ユニット招致”を実施していることを紹介した。また、「教員の所属を学部でなく『系』とする組織改革を行い、組織・分野を超えた教育研究活動や、国際互換性のある学位プログラムの導入を図っている」と語った。さらに、入試改革について、「学生の自立性の涵養につながる入学者選抜方法への改革や、国際バカロレア(IB)入試を含むグローバル入試の全学での実施などに取り組んでいる」と説明した。
■ 産業界との連携や今後の期待
最後に永田氏は、「企業と連携した寄附講座を設置しているほか、筑波地区の研究開発法人・企業研究部門・筑波大学による協議体を母体とする大学院を設置し、関係機関から参加したスタッフが教育課程を決定して指導を分担する体制を整えている」と述べた。産業界に対しては、現地法人におけるインターンシップなど企業による学生への海外経験の場の提供や、理工系・医学系のみならず、人文社会科学・教育学・スポーツ・健康などの幅広い大学の知見の活用を期待するとした。
【教育・スポーツ推進本部】