経団連は8月4日、東京・大手町の経団連会館で起業・中堅企業活性化委員会人材活躍推進部会(立石文雄部会長)を開催した。「中堅・中小企業における障がい者の活躍推進」をテーマに、リゾートトラストとサンフロンティア不動産の事例を聞いた後、出席各社の現状や課題に関し、小グループに分かれての討議・発表を通じて委員間での認識の共有を図った。企業事例の概要は次のとおり。
■ リゾートトラスト(進藤祥一東京人事総務部長)
当社は、障がい者を経営上の課題解決に向けた重要な戦力と位置づけて雇用を進めている。主な活躍の場は、10年前にダイレクトメールの作成業務を担うことからスタートした「東京事務支援センター」である。
当時、多くの営業社員は外出先から戻った後に各自でダイレクトメールを作成していたため時間外労働が多く、労務管理上問題となっていた。
そこで、同セクションを新設し、業務内容の整理と作業項目の洗い出しを丹念に行ったうえで障がい者スタッフが作成を担当したところ、営業社員の労働時間は大幅に短縮した。その後も各部門との相談を通じて、現場の効率化や負担軽減、経費削減などの課題解決につながる業務の切り出しを継続した結果、現在では100種類以上を担当するまでになった。
業務の拡大は、障がい特性にあった柔軟な業務分担の可能性を高め、定着・安定につながっており、障がい者スタッフの数は10年前の4名から54名(雇用率2.20%)へと着実に増加している。
これまでの取り組みは、各方面で評価を受け、2014年1月には天皇皇后両陛下から激励も賜った。引き続き社会貢献という意味合いも認識しながら、障がい者雇用の価値を高めていきたい。
■ サンフロンティア不動産(二宮光広執行役員人事総務部長)
初めての障がい者雇用は、13年2月に3名の発達障がい者を採用することからスタートした。
採用の検討に際して、さまざまな情報交換を通じて、自立した生活を望む方が多い一方で、十分な環境で働く障がい者は多くないことを知った。
そこで、障がい者雇用の目的を職業による自立の支援社員の優しい心思いやりの心の醸成と定め、できるだけ長く一緒に働いてもらえる環境の整備に取り組んだ。
受け入れ体制の整備では、全従業員を対象とした社内勉強会を行い、障がい者雇用の意義や目的の共有、障がい者に対する思い込みの除去に注力した。また、配属部署には、障がい者一人ひとりに指導役を置き、相談しやすい体制とした。
採用に際しては、働く意欲が強く、家族や支援機関からのサポートがしっかりしていることを条件とし、面接会で一人ひとり状況を確認した。
採用後に各部署へ配属して以降は、指導役のもとでおのおのの特性に応じた業務を担ってもらっている。人事部門では個別面談を6カ月ごとに行うほか、目標管理シートを使って、今後1年間の業務内容やレベルを設定し、現場と協力しながら現状把握と能力開発を進めている。こうした取り組みのもと、3名とも採用時点と比べて業務の範囲、量ともに大きく伸び、日々の労務管理でも特別な対応は不要となった。
今後も障がい者の職業面での自立を支援するとともに、より多く雇用ができるよう全社員一丸となって精進していきたい。
【労働政策本部】