経団連の雇用政策委員会(岡本毅委員長、進藤清貴委員長)は7月22日、東京・大手町の経団連会館で委員会の改組後1回目となる会合を開催し、村木厚子厚生労働事務次官から「労働行政の現状と課題」と題する講演を聞き、意見交換を行った。村木事務次官の講演の概要は次のとおり。
■ 現状をどう考えるか
日本では少子化の進行に伴い、生産年齢人口の減少と急速な高齢化が加速している。
少子高齢化社会において経済成長を実現するためには、女性や高齢者等の潜在労働力の活用が不可欠である。経済成長と労働市場への参加が適切に進めば、近い将来の就業者数予測は、大幅に見直すことができる。そのためには、高齢者層の労働力率の上昇に加えて、女性の労働力が大幅に増加することが重要となる。
日本の高齢者の就業率は、欧米諸国と比較すると、特に男性ですでに高水準となっている。内閣府の意識調査において、65歳を超えても働きたいと回答した者の割合が約5割を占めていることや、70代男性のボランティアへの参加率が最も高いことなどから、一層の労働参加が期待できる。
一方、女性の就業率については、M字カーブ傾向が先進国に比べて顕著である。女性の職場への進出が出産を抑制するという意見があるが、先進国の多くは、女性就業率、出生率ともに高い傾向にある。女性にとって働きやすいだけではなく、働きがいのある社会を実現することで、女性の就業率の上昇、ひいては将来の働く担い手となる子どもの出生率の上昇にもつなげていきたい。
非正規雇用労働者が増加傾向にあるが、過去10年をみてみると、増加の主な要因は、60歳以上の男女と15~59歳の女性である。自ら非正規雇用を選択している方もいる。多様な働き方が選択可能となることにより、労働市場への参画が進んでいる面もあるといえる。ただし、不本意非正規の問題から目を背けてはならない。特に割合の高い、男性の20~50代層、女性の20~30代層については、対策を講じる必要がある。
一方で、フリーターの予備軍となり得る未就職卒業者や障害者のなかにも未来の働く担い手が潜在しており、政策や企業努力により、いかにしてこれらの方に活躍いただくかが大きな課題である。
■ これからの課題
これらの状況を踏まえ、今後は、「全員参加の社会」の実現による労働参加の増加と、「社会全体での人材の最適配置・最大活用」による生産性の向上を基軸として、「仕事を通じた一人ひとりの成長と、社会全体の成長の好循環」を達成すべく、政策を展開していく。
具体的な政策課題は、6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」において掲げられている。
わが国を取り巻く課題を解決するためには、労働者一人ひとりと企業、社会全体がベクトルをあわせ、好循環を回していくことが重要である。今後も経団連や企業の皆さまの協力も得ながら、政策の検討・実行に努めていきたい。
【労働政策本部】