経団連の経済財政委員会(石原邦夫委員長、上釜健宏委員長)は7月21日、東京・大手町の経団連会館で委員会新設後初回となる会合を開催し、西村康稔内閣府副大臣から政府が進める成長戦略や経済・財政一体改革について説明を受けた後、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 経済の好循環の拡大
これまでの2年半では、第一の矢、第二の矢によって、過度な円高が是正されるとともに、需要を呼び起こすことで、企業収益が拡大してきた。東証一部上場企業の純利益合計は史上初の20兆円を超え、税収は21年ぶりに54兆円まで回復し、財政健全化の道筋もみえてきた。設備投資も2年間で約5兆円増加し、国内回帰の動きや中堅・中小企業への波及もみられる。今後は政労使会議で約束された賃金増や取引条件の改善を実行に移すとともに、コーポレートガバナンスのさらなる強化などを通じて、経済の好循環を一層拡大していきたい。
将来の人口減少が見込まれるなか、生産性が停滞した場合はマイナス成長となってしまう。アベノミクス第2ステージでは、イノベーションの創出、生産性の向上を重視し、特に2020年までの5年間に集中的にプロジェクトを動かして、未来への投資ならびに生産性革命を推進したいと考えている。
■ マイナンバーの利活用範囲の拡大
来年1月から利用が始まるマイナンバーは、国民の利便性の向上、行政の効率化につながる。今後は、セキュリティーには万全を期し国民の理解を得つつ、健康保険証やキャッシュカード・クレジットカードとして、個人番号カードの利用範囲の拡大も検討していく。
■ IoT・ビッグデータ等の活用によるイノベーション
自動車や家電、インフラなどあらゆるものがネットワークでつながり、ビッグデータを分析して活用することで、今後、ものづくりの変革や大きな市場変化が見込まれる。米国企業の約9割がビッグデータを利用しているが、日本企業では3割に満たない。日本のIT技術者数は米国、中国、インドに比べて少ないうえ、米国と比べて製造業を中心にユーザー企業に人材が少ない。製造業でIT利活用を積極的に進めてほしい。
■ 包括的な国際経済ルールの整備
TPP(環太平洋経済連携協定)は物品関税の撤廃だけでなく、高いレベルの貿易・投資ルールを整備するうえでも極めて重要である。
例えば地理的表示などの知的財産保護のルールにより、地域ブランドを守ることができる。TPP域内に適用される原産地規則を活用することで、アジア太平洋地域で日本に有利なバリューチェーンをつくり出すことが可能となる。TPP域外の中国や韓国には高いレベルの貿易・投資ルールへの適応を求めるプレッシャーとなる。また、TPPが刺激となってEUとのEPA交渉も進む可能性がある。
■ 経済・財政一体改革
安倍内閣としては、名目3%、実質2%程度を上回る経済成長の実現を目指している。成長しながら、歳出改革も行い、財政健全化に取り組むつもりである。
【経済政策本部】