経団連の社会基盤強化委員会(山内隆司委員長、川合正矩委員長、橋本孝之委員長)は15日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、山谷えり子国土強靱化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災)から、政府における国土強靱化および防災・減災に向けた取り組みについて、講演を聞くとともに、意見交換を行った。
講演の概要は次のとおり。
本日は、国土強靱化および防災・減災に向けた取り組みを大きく5つの項目に分けて述べる。
第1に、いまや「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」は世界の潮流となっている。「Resilient Dynamism」をテーマとした2013年ダボス会議あたりから強靱性が国際競争力のベースになるという考え方が広まり、今年3月開催の第3回国連防災世界会議でも、各国の参加者が、自然災害等に対して強くしなやかに対応できる社会の実現に向け、防災・減災対策を平時から推進する国土強靱化の必要性に言及している。
第2に、過去の災害の経験や高い科学技術力を活かした信頼できるインフラのパッケージこそが日本の強みであり、これを世界に展開することが力強い経済成長にも、国際社会への貢献にもつながる。政府は「インフラシステム輸出戦略」において、2010年には約10兆円だった海外からの受注額を、2020年には30兆円とする目標を定めている。各国の個別のニーズを把握したうえで安倍総理を先頭にトップセールスを進めており、一昨年の受注実績は約16兆円、さらなる輸出促進に努めていきたい。
第3に、国土強靱化は、コストではなく「投資」である。05年にアメリカで発生したハリケーン・カトリーナによる被害は当時の為替レートで約14兆円に上ったが、米国陸軍工兵隊によれば、堤防整備など約2200億円の事前投資でこの被害はゼロにできた。今後、発生が懸念される首都直下地震に対しても、建築物を事前に耐震化することで、全壊棟数・死者数を約9割減らすことができるという試算もある。先日、経済財政諮問会議において国土強靱化の説明を行ったが、こうした考え方についてまったく異論のなかったところである。
第4に、国土強靱化は、地方創生と「車の両輪」である。平時・有事のいずれを主な対象としているかといった違いはあるものの、ともに地方の豊かさを維持・向上させるための取り組みである。例えば、本社機能の一部分散は、地方への人の流れをつくるだけでなく、災害時の企業の事業継続の観点からも有効である。実現のハードルは高いと思われるが、すでに取り組まれている事例もあり、各企業において先入観を持たずに検討されることを期待する。
第5に、国土強靱化の今後の展開のためには、PDCAサイクルの徹底とともに、自治体や民間の取り組みを促進させることが重要である。現在、39都道府県、13市区町が国土強靱化地域計画にかかる取り組みに着手しており、政府としては、ガイドラインを作成し、計画の実施に対しても交付金等による支援を行っている。また、今年6月には「民間の取組事例集」を取りまとめ・公表しており、民間の自主的取り組みに向けたさらなる意識の醸成を図っていきたい。
最後に、11月5日の「津波防災の日」について紹介する。津波防災の日は、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるために法定されたもので、今年も同日に向けて、自治体や学校、民間企業をはじめ各方面に避難訓練の実施等を呼びかけている。経団連におかれても、ぜひ協力をお願いしたい。
講演後の意見交換では、災害時の物資輸送のための道路整備、防災に関連するICTの普及、企業のBCPの実効性向上について意見が交わされた。
【政治・社会本部】