経団連が4月14日に取りまとめた「わが国経済外交のあり方に関する提言」(4月16日号既報)では、わが国の情報発信力を強化する観点から、今後設置される「ジャパン・ハウス」(注)と在外公館との連携拡充等を通じて、日本に関する情報を戦略的に発信していく旨要望している。また、経団連では、外務省の要請に応じてロンドンのジャパン・ハウスに職員を派遣しているほか、さまざまなかたちで協力している。
そこで、経団連の経済外交委員会企画部会(清水祥之部会長)は5月20日、東京・大手町の経団連会館で、外務省の水嶋光一参事官(報道・広報・文化交流担当)から、ジャパン・ハウスを通じた戦略的対外発信の強化策について説明を聞いた。説明概要は次のとおり。
■ ジャパン・ハウスの創設意義
国際社会における情報量の増大や伝達手段の多様化、さらに諸外国の広報文化外交への注力等を受け、戦略的に対外発信を強化する必要性が高まっている。そこで、外務省では今年度、500億円増の戦略的対外発信予算を計上している。
取り組みの三本柱は、(1)日本の「正しい姿」の発信(2)日本の多様な魅力の発信(3)親日派・知日派の育成――である。この一環として、「オールジャパン」の対外発信拠点となる「ジャパン・ハウス」(仮称)をロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの3都市に設置すべく、各都市の市内一等地に物件を賃借している。
ジャパン・ハウスでは、例えばセミナールームを使った日本酒のイベントなど日本ブランドの発信、日本の平和国家としての歩みや国際貢献に関する展示・講演・セミナーの開催、さらに日本語教育の拡充など、多様なアプローチが可能である。
これまで必ずしも日本に関心がなかった人々を含め、幅広い層を惹きつけたうえで、親日派・知日派の裾野を一層拡大することがねらいである。
■ 3都市選定の理由
ジャパン・ハウスの場所の選定にあたっては、発信の効果や日本との関係、地理的配分等の要素を考慮した。ロンドン、ロサンゼルス、サンパウロの3都市に設置することとした主な理由は、次のとおりである。
- ロンドン
欧州のみならず世界への情報発信のハブであり、世界中の知識層が集う中心都市であり、多くの国際企業が拠点を構える世界有数の金融都市。 - ロサンゼルス
米国におけるアジアのゲートウェーであるカリフォルニア州の中心都市であり、米国内最大の日系人コミュニティが存在。 - サンパウロ
ブラジルならびに南米随一のビジネスの中心都市であり、世界最大規模の日系人コミュニティが存在。
■ 今後の取り組み
外務省としては、不動産や内装設計、事業の運営を含む業務を一括して民間の事業体に委託することを想定している。今後、民間企業を含む専門家の知見も活用しつつ、国内外でジャパン・ハウスの実施体制を確立し、事業運営に関するPDCAサイクルを回していく。
(注)ジャパン・ハウス=外務省が設置を検討中。日本に関するさまざまな情報が一括入手できるワンストップ・サービスを提供するとともに、カフェ・レストラン、アンテナショップ等を設置し、民間の活力や地方の魅力なども積極的に活用し、現地の人々が「知りたい日本」を発信することをコンセプトとした新たな発信拠点
【国際経済本部】