経団連は3月12日、東京・大手町の経団連会館で、「コーポレートガバナンス・コード実務対応セミナー」を開催した(前号既報)。
コーポレートガバナンス・コードは、昨年5月の自民党「日本再生ビジョン」、同年6月の政府の成長戦略「『日本再興戦略』改訂2014」において、策定の方針が盛り込まれた。これを受け、昨年8月から金融庁と東京証券取引所が共同事務局となる「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」においてコードの基本的な考え方が検討され、3月5日に原案が取りまとめられた。
今後、原案を踏まえ、東証において上場規則の改訂が行われ、6月1日から適用が開始される予定である。
セミナーにおける森・濱田松本法律事務所の澤口実弁護士の説明の概要は次のとおり。
1.総論
6月1日からのコード適用開始に向けて、会社としては、コードへの対応について検討を進める必要がある。もっとも、コードはコンプライ・オア・エクスプレインの手法を採用しており、各原則を当然にコンプライ(実施)する必要はなく、エクスプレイン(説明)することも可能である。ただし、今後改正される上場規則においても、コードの趣旨・精神を尊重するものと位置づけられる見込みであるため、会社の説明には説得力が必要となる。
コードに基づく開示(原則1-4、3-1等)およびコードを実施しない場合の説明は、コーポレートガバナンス報告書への記載が求められるが、前者についてはいわゆる参照方式も認められる予定である。コードで「説明」が求められる原則(1-3、1-5等)については、「開示」とは異なり、その方法は裁量に委ねられる。具体的には、適時開示のほか、アニュアルレポートやホームページへの記載、株主総会での説明などが考えられる。なお、報告書については、適用初年度に限り、準備ができ次第速やかに提出することとされ、株主総会終了後遅くとも6カ月後までに提出することが求められる見込みである(例えば、今年6月に株主総会を開催する場合は12月までに提出すればよい)。
2.コードの主要な原則について
(1)政策保有株式
コードの原則1-4では、政策保有株式の保有自体は禁止してはいないが、(1)取締役会で毎年、経済合理性等について検証すること(2)保有のねらい(政策目的)と合理性の双方について具体的な説明をすること(3)保有と議決権行使の双方について方針を策定して開示すること――が必要となる。なお、具体的な取引上の利益については、株主の権利行使に関する違法な利益供与に該当しないよう体制整備等に留意すれば、株式保有の合理性の根拠となる。(2)取締役会の役割・責務
原則4-1、4-2、4-3では、取締役会の役割・責務を規定しているが、モニタリングモデルを含む特定の取締役会のスタイルは推奨してはいない。独立社外取締役に関し、取締役会は、原則4-9により取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立性判断基準を策定・公表することが求められる。なお、東証で検討がなされた結果、独立性基準自体について、基本的な考え方に変更はないが、開示加重要件が廃止される見込みである。
また、補充原則4-10(1)により、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討にあたり、独立社外取締役の適切な関与・助言を求めており、その具体的な方法の例として任意の諮問委員会を挙げている。もっとも任意の諮問委員会の設置はあくまでも例示であり、その他の方法により適切な関与・助言が得られればよい。
【経済基盤本部】