政府は総合資源エネルギー調査会の下に「長期エネルギー需給見通し小委員会」を設置し、エネルギーミックスの検討を開始した。エネルギーミックスの策定にあたっては、安定供給、経済効率性、環境適合性の適切なバランスの確保が重要であり、経団連としても、そのような視点を軸に意見を述べる必要がある。
そこで経団連は2月25日、東京・大手町の経団連会館で資源・エネルギー対策委員会企画部会(鯉沼晃部会長)を開催し、独自の経済モデルを活用し、わが国のエネルギーミックス等に関する定量的な分析を行っている慶應義塾大学産業研究所の野村浩二准教授から、エネルギーミックス策定に向けた考え方について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。
■ エネルギーミックス策定に向けた視点
(1)需要見通し
震災後、日本の電力消費が減少したのは、将来に予定していた省エネ対策を前倒しで実施した結果である。したがって、直近3~4年のトレンドに基づいて将来のエネルギー需要を推計すると、省エネ効果を過大に見積もってしまう懸念がある。(2)省エネのコスト評価
日本のような先進国では途上国よりも省エネコストは高くなる。また、省エネのための資本導入には時間がかかる。省エネにより財・サービスの品質が低下することも忘れてはならない。(3)原子力発電所のコスト評価
再稼働に向けて検討が必要なのは、追加的な費用がどの程度かかるかである。原子炉を新規制基準に適合させるために要するコストや更新コスト等を検討する必要がある。(4)再生可能エネルギー
再生可能エネルギーについては、高い導入コストを正当化できるだけの経済効果が見られない。習熟効果による価格低下も実証的に見いだされておらず、導入戦略を見直す必要がある。(5)CO2削減のコスト評価
低炭素化の推進には高いコストがかかることを認識し、他の先進国の努力水準との調和が重要ということを強調すべきである。
■ 電力価格上昇の影響
欧州諸国では電力自由化により、2000年代に電力価格が急上昇した。その結果、イタリア・ドイツにおける電力多消費産業の生産が低下し、雇用が減少した。震災後、原子力発電所の稼働停止等により電力価格が2~3割上昇した日本も同じ路線を歩む懸念がある。
■ FIT(固定価格買取制度)による太陽光発電の推進
再生可能エネルギーの導入量は2000万キロワット(2011年度末)から3470万キロワット(14年度)に拡大し、賦課金総額は1900億円(12年度)から6500億円(14年度)へ増加した。導入量の大部分は太陽光発電であるが、太陽光パネルのシェアの大半は輸入品に占められ、国内生産者の育成には寄与していない。また、FITによって調達価格が長期間、高めに固定されているため、輸入品を含めた太陽光パネルの生産価格が下がらず、消費者は割高な価格での電気購入を余儀なくされている。
【環境本部】