経団連は1月27日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。榊原定征会長をはじめ審議員会議長、副会長らが出席し、関西地区からは森詳介関西電力会長をはじめ約400名が参加。「『豊かで活力ある日本』の再生」を基本テーマに、活動を報告するとともに懇談した。
開会にあたり榊原会長は、年初に発表した経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」(1月1日号既報)を説明。15年後の2030年を目標にわが国が目指すべき国家像を具体的に描いたうえで、政府、企業、国民等が集中的に取り組むべき課題を示すとともに、ビジョンの実現に向け経団連が積極的に行動する決意を述べ、関西会員に支援と協力を呼びかけた。
■ 活動報告
活動報告では、(1)2年間の実質減税となった法人税改革を含む平成27年度税制改正(佐々木則夫副会長)(2)わが国財政の現状と財政健全化に対する経団連の基本的考え方(石原邦夫副会長)(3)14年度経団連規制改革要望の取りまとめと政府への働きかけ(小島順彦副会長)(4)コーポレートガバナンス・コードの策定に向けた動き(奥正之副会長)(5)今次春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢(宮原耕治副会長)(6)TPP(環太平洋経済連携協定)、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)等、FTA/EPA網形成の動き(勝俣宣夫副会長)(7)女性の活躍推進の現状と経団連の取り組み(大宮英明副会長)(8)地方経済活性化に関する提言の取りまとめに向けた検討状況(畔柳信雄副会長)(9)観光立国の実現に向けた経団連の取り組み(大塚陸毅副会長)――をそれぞれ説明した。
■ 自由懇談
自由懇談では、関西地区の会員から、(1)急速に高齢化が進み、健康が今世紀最大のテーマとなるなか、世界をリードする再生・細胞医療の実現・普及にあたっては、神戸医療産業都市など、産学官連携の取り組みが重要(菅原公一カネカ会長)(2)最も早く高齢社会を迎えるわが国にとって、ヘルスケアを基幹産業として育成する意義は大きい。その際に課題となるのが、リスクマネーの供給と効率的な人材育成である(土屋裕弘田辺三菱製薬会長)(3)水素は人類の生活のあり方を根本から変える、いわば「第2の産業革命」の引き金になる。より多くの企業に水素事業に参画いただくとともに、さらなる規制改革を要望する(牧野明次岩谷産業会長兼CEO)――との問題提起があった。
これに対し、(1)神戸医療産業都市は産学官連携の好事例であり、医工連携による製品開発をはじめ、さまざまな分野でイノベーションが創出され、神戸が世界の知の集積拠点となることを期待(内山田竹志副会長)(2)大企業とベンチャーとの連携や大企業発のベンチャー等について事例研究を行い、その共有を図ることでベンチャー投資を一層加速させたい(荻田伍副会長)(3)水素社会を実現していくためには、製造・貯蔵・輸送・利用の各段階で、コスト面、環境面、制度面の課題を乗り越える必要があり、産学官が一体となって解決に向けた取り組みを進めることが重要(岩沙弘道審議員会議長)――と応じた。
その後、関西電力の森会長から、安全性が確認された原子力発電所の再稼働、リニア中央新幹線の東京・大阪間全線同時開業、21年の関西ワールドマスターズゲームズの大会準備や国内外へのPRに、経団連の理解と協力を求めたいとの考えが示された。
最後に榊原会長は、「15年は、デフレからの脱却を確実に実現する年にしなければならない。経済の好循環の2巡目をしっかりと回していくため、収益が拡大している企業はより積極的に賃金の引き上げを検討していただきたい」と締めくくった。
【総務本部】