経団連(榊原定征会長)は1日、「『豊かで活力ある日本』の再生」と題する新しいビジョンを発表した。ビジョンでは15年後の2030年を展望し、日本が目指すべき国家像の姿を具体的に描き、国家像の実現に向け、政府、企業、国民等が集中的に取り組むべき課題を、政策分野ごとに整理して取りまとめた。
今後、経団連は関連する政策委員会において、ビジョンで示された課題の実現に向けて、関係方面への働きかけなどを精力的に行っていく。新ビジョンの概要は次のとおり。
1.はじめに
アベノミクスにより、経済再生への期待が高まりつつあるなど、日本にとって最大の、そして最後ともいえる好機が到来している。他方、先行きは本格的な人口減少や社会保障給付費の急速な増加、原子力発電所停止に伴うエネルギー問題、経常収支赤字化への懸念など、課題が山積している。
明るい未来を切り拓き、活力ある経済・社会を次代へ引き継いでいくためには、政府、企業、国民のそれぞれが、オールジャパンで日本再興に取り組まなければならない。
そこで、「イノベーション」と「グローバリゼーション」が経済活力の源泉であるとの認識のもと、2030年のあるべき(2020年代に実現すべき)日本の姿を描くこととした。
2.企業の役割と経団連の使命
企業の持続的成長は、国民生活の向上と一体を成す。企業は国民生活を一層豊かなものとしていくため、自ら主体的にリスクを取って、設備投資・研究開発投資などの事業拡大投資を行い、積極的に成長機会を創出することで、雇用機会・賃金の拡大に努める。
経団連は民主導の成長実現に向けて、経済界全体の進むべき方向性を示し、企業の積極果敢な行動を先導する。その際、時代の潮流や国民意識の変化に合わせて、経団連自身の不断の改革努力を行い、進化を続けていく。
3.2030年までに目指すべき国家像
2030年までに目指すべき国家像を「1、豊かで活力ある国民生活を実現する」「2、人口1億人を維持し、魅力ある都市・地域を形成する」「3、成長国家としての強い基盤を確立する」「4、地球規模の課題を解決し世界の繁栄に貢献する」の四つに集約した。
日本としては、これら四つの国家像を目指すなかで、がんばった者が報われる社会を構築し、(1)若者が日本国民であることに誇りを持ち、チャレンジ精神を発揮し、希望ある未来を切り拓いていける国(2)世界から信頼され、尊敬される国――を実現しなければならない。
4.2030年の日本経済・産業構造の姿
ビジョンで掲げた改革を着実に推進することにより、次のような経済・財政の姿を描くことが可能となる。
第一に、イノベーションによる生産性の向上やグローバリゼーションによる海外需要の獲得などの改革を通じて、名目3%、実質2%程度の持続的成長が実現する。結果、2030年度時点の名目GDPは約830兆円、国民1人当たり約700万円まで拡大する。
第二に、社会保障・税一体改革をはじめとする財政再建への取り組みなどにより、プライマリーバランスは2020年度に黒字化し、長期債務残高の対GDP比も緩やかに低下する。
あわせて、ビジョンでは2030年の産業構造の姿についても定量的に描き出している。
※詳細は http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/vision.html 参照
【経済政策本部】