わが国は現在、新たな成長エンジンの一つとして、官民挙げて観光立国に向けた取り組みを進めている。ビザ(査証)緩和や免税制度の改正など安倍政権の積極的な取り組みもあり、2014年の訪日観光は、人数が年内に1300万人を突破、消費額も9月末時点で昨年を上回る約1.5兆円と過去最高の実績を挙げている。
こうした状況のなか韓国は、国別の訪日外国人旅行者数に占める割合も高く、わが国の国際観光にとって最も重要な国の一つであるが、韓国から日本を訪れる旅行者数は、震災以降の落ち込みから回復し比較的順調に推移しているのに対し、日本から韓国を訪れる旅行者は、為替と両国の政治外交関係の影響から減少が続くという状況にある。
そこで両国の観光当局と民間の観光業界・経済団体・自治体は、15年の国交正常化50周年を前に日韓の観光・文化交流の一層の促進を目的に、12月3日に都内で「日韓観光交流拡大シンポジウム」を開催した。これは8月のソウルに続き2回目の開催となる。経団連も、官民を挙げた双方向の観光交流の推進と、観光を通じた国民の草の根交流による両国の関係改善に向け、韓国の全国経済人連合会(全経連)と連携して同シンポジウムを後援するとともに、会員企業に加え、各地の経済団体、広域観光組織に参加を呼びかけた。
シンポジウムは日韓双方の官民約300名が参加し、盛大に行われた。また、シンポジウム終了後には、原子力発電所事故の風評被害をいまだ大きく受けている東北の観光を後押しするため、日本政府が韓国からの参加者約50名を仙台・松島に招待した。
シンポジウムであいさつした経団連の大塚陸毅副会長・観光委員長は、経団連の日韓観光交流拡大に向けた取り組みとして、会員企業に韓国へのインセンティブツアーの実施を呼びかけ、「月刊経団連」で韓国観光公社の告知を掲載したことを報告。また、12月1日に全経連首脳との懇談会を開催し、観光について参加者から多くの言及があったこと、両団体が未来志向的な協力関係をあらためて構築することを共同声明で宣言し、朴槿惠(パク・クネ)大統領には直接、両国政府首脳の対話をお願いしたことを紹介し、両国の観光関係者が緊密な連携体制を構築するとともに、観光の力を両国の国民各層にアピールしていくことが重要と訴えた。
今回のシンポジウムでは、15年の国交正常化50周年、18年平昌・20年東京と続くオリンピック・パラリンピックに向けて、両国の関係者の連携強化の機運が徐々に高まってきたことを感じることができた。
また、今後の観光交流拡大に向けては、大都市圏での観光に加え、地方観光の振興が両国共通の課題となることも確認できた。
経団連観光委員会では、今後もさまざまな機会を利用して、国際観光交流の促進に向けた民間外交を行うとともに、地方観光の振興に向けて、人材育成などさまざまな側面から地域の経済団体や広域観光組織との連携を強化していく。
【産業政策本部】