経団連の榊原定征会長は12月17日、日本商工会議所の三村明夫会頭、経済同友会の長谷川閑史代表幹事とともに安倍晋三総理大臣を訪問し、「新内閣に望む」を建議した。
安倍総理からは、「総選挙の結果におごることなく、この力を生かして困難な政策課題にも挑んでいきたい」との発言があった。これに対し榊原会長は、「経済界としても、引き続き安倍内閣の政策遂行に全面的に協力していきたい」と述べた。建議の全文は次のとおり。
新内閣に望む
わが国は、デフレからの脱却、持続的な経済成長の実現に向けた正念場にある。アベノミクスは着実に成果を上げ、経済再生への道筋が見えつつあるなか、これを確実なものとし、豊かで活力ある国民生活を築いていかなければならない。被災地はもとより、地域経済や中小企業に成長の実感が行き渡り、地方創生にもつながるようにすることが重要である。
このたびの選挙結果は、国民がアベノミクスを支持し、今後の成果に期待していることの表れである。
経済界としても、民主導のイノベーションを通じて、企業収益の拡大が、投資や雇用の拡大、賃金の引き上げにつながる経済の好循環を創り出すべく、引き続き積極的に取り組む所存である。
新内閣には、そのための環境整備を進めるとともに、必要な経済対策を早急に策定・実行するなど、今後とも経済再生に最優先で取り組んでいただきたい。同時に、財政健全化の道筋をあらためて内外に明示し、わが国財政に対する信認を高めることも不可欠である。
安倍総理の強いリーダーシップのもと、とりわけ下記に掲げる重要政策課題を強力に推進していただきたい。
震災からの復興を加速する。
企業活力の向上に資する、規制・制度改革、税制改革を進める。
安全性が確認された原子力発電所の再稼働プロセスの加速、固定価格買取制度の見直しなどにより、エネルギーの安定供給と経済性を確保する。適切なバランスがとれたエネルギーミックスを策定する。
産学官連携の強化などにより、科学技術イノベーションを推進する。
財政健全化に向けて、2020年度のプライマリーバランス黒字化への道筋を明示する。
社会保障給付の重点化・効率化の徹底などにより、社会保障制度の持続可能性を確保する。
地域経済の活性化のため、地域の中核企業ならびに基幹産業である観光・農業の競争力強化につながる施策を展開する。防災・減災対策や国土強靭化についても、優先順位をつけて実施する。
子育て環境の改善、外国人材の活用など、高齢化と人口減少問題への対策を強化する。
女性の活躍推進をはじめ企業の人材活用の取り組みを支援するため、多様で柔軟な働き方の基盤を確立する。グローバル人材やイノベーション人材育成のための教育改革を行う。
わが国が技術を通じ地球規模で温暖化対策に貢献できるよう、国内対策を推進するとともに、攻めの環境外交を展開する。
TPP、RCEP、日中韓FTA、日EU EPAなどの経済連携に早期に合意する。官民連携の下で、インフラや、食・コンテンツなど幅広い産業の海外展開を推進する。アジア近隣諸国との関係を一層強化する。