経団連の女性の活躍推進委員会企画部会(中川順子部会長)は12月10日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、IMD(注)のギンカ・トーゲル教授から、「女性リーダーの育成と活躍推進」ならびに「ダイバーシティを生かす新しい働き方」をテーマに講演を聞くとともに、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
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女性リーダーの活躍推進は、世界的にみても極めて重要な課題である。さまざまな調査で、管理職の女性比率が高いほど、企業の実績もより向上することが示唆されている。
それでは、女性リーダーはどのような点で優れているのだろうか。リーダーシップには、変革型(Transformational)と交換型(Transactional)の二つが存在する。女性は、「ロールモデルたりえるか」「部下の育成ができるか」等の変革型リーダーシップに必要な要素において、男性よりも優れているとの研究がある。それにもかかわらず、女性のリーダーが少ないことの背景として、歴史的に男性が社会的に優位に立ってきた経緯を見逃すことはできない。
いまだに社会全体には、女性が男性に劣後するという無意識のバイアスがある。このため、女性は自分がリーダーとなることにためらいがちになり、また男性側も女性リーダーを受け入れることに抵抗を感じてしまう。これは、各種実験や私自身の研究結果によって裏づけられている。
したがって、女性の管理職比率を上げていくためには、男女の性別に関するバイアスを払拭することが不可欠である。その際、企業文化の変革が、いかに女性の成功への自信、ひいては昇進に結びついているかを見逃してはならない。
企業においては、女性社員へのメンターによる心理的サポートだけではなく、スポンサーシップが必要である。すなわち、メンターが管理職候補の女性社員の昇進に向けて重要な任務やポストを与える等、能力を発揮できる機会を積極的に提供することが求められる。
あわせて、長時間労働の慣行も改革しなければならない。日本人男性の家事、育児への参画はあまりにも進んでいない。例えば、定時内に良質の仕事を終えることを評価するなど思い切った取り組みが必要だ。
女性にとって働きやすい組織を目指すことは、ひいては男性を含む全従業員の働きやすさを実現することにつながるだろう。
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講演後の委員との意見交換では、女性向けの管理職育成プログラムや長時間労働の慣行の是正、共働き家庭が留意すべきことなどについて、活発な議論が行われた。
(注)IMD(International Institute for Management Development)=スイスにある世界トップクラスのランキングを誇るビジネススクール。グローバルリーダーの育成について数多くの実績を有している。トーゲル教授は、女性リーダーの活躍推進を研究しており、IMDでは、女性企業幹部向けのリーダーシップ研修も実施している
【政治社会本部】