経団連は4日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(横山進一共同委員長、小林喜光共同委員長)を開催し、横田淳日EU・EPA交渉担当日本政府代表、鈴木英夫経済産業省通商政策局長から、日EU EPA(経済連携協定)交渉の現状について説明を聞いた。説明概要は次のとおり。
■ 横田政府代表説明
交渉は今年4月に開始され、3回の交渉会合が終了した。期待したほどではないものの、前進はしているというのが個人的な見解である。EUは、従来の関心事項である非関税措置に加えて、加工食品を中心に関税についても厳しい要求を伝えてきている。
11月19日に開催された日EU定期首脳協議では、日EU EPAの早期締結に向けたコミットメントがあらためて確認された。
また、物品、サービス、調達における野心的な市場アクセスのオファーを遅滞なく提示するとともに、非関税措置および鉄道の課題に取り組むこととされた。
交渉開始から1年後の来年4月ごろに、EUはわが国の取り組みをレビューし、交渉継続の是非を判断することとしており、1月下旬に行われる第4回交渉でどの程度の進展をみることができるかが重要である。交渉開始の際、EU内の一部の加盟国や業界が日EU EPAに懐疑的であった経緯も踏まえ、レビューについては、日本側としても注意する必要がある。非関税措置については、交渉開始前に約束したとおり着実に取り組んでいるところである。
米国とのFTA(自由貿易協定)に比べて日本とのEPAに対するEU経済界の支持が広がりを欠くといわれているなかにあって、日EU双方の経済界から早期締結を求める共同声明が出されたことは大変心強い。引き続きEU経済界の関心を喚起するとともに、加盟国へのアプローチに注力していく。
■ 鈴木局長説明
日EU EPAについて、EU内の批准プロセスでは欧州議会の承認、かつ各EU加盟国での批准手続きも必要となるため、合意してから発効までに時間を要することに留意する必要がある。来年4月のEU側レビューが重要であるが、欧州委員会は、5月に予定されている欧州議会選挙の前に、前向きなメッセージを出したいと考えているのではないかと思われる。
調達は難しい問題であり、EUが求める「公共」調達は、「政府」調達よりも広い概念となっており、電力会社が国有企業であるような欧州と日本とは状況が異なることから、このギャップをどう埋めるのかが課題となる。このなかで、EUが特に関心を示しているのは鉄道分野である。
調達といった非関税分野に加えて、関税分野の議論もあり、EU韓FTA、EUカナダFTAは高いレベルの自由化率となっていることから、EUは日本にも同様のレベルを求めている状況である。
EUは現在、米国とのFTA交渉を進めており、特に注目すべきは規制協力についての議論である。EUでは、新たな規制案や既存規制の改定案の提出が相次いでおり、加盟国の間でバラバラな規制をEU域内で統一しようとしている。こうした動きにどのように対応していくかが今後の課題である。日EU EPA交渉においても、非関税措置に関するEU側の要望への一方的な対応というよりは、分野別の規制協力の関係をいかに構築していくかが本質である。
産業界におかれては、問題がある規制については交渉の場でも取り上げていきたいので、密に情報交換をさせていただきたい。
【国際経済本部】