経団連は11月29日、東京・大手町の経団連会館で、マリア・ファン・デル・フーフェン国際エネルギー機関(IEA)事務局長との懇談会を開催し、世界のエネルギー見通しについて説明を聞くとともに意見交換を行った。経団連からは加藤泰彦資源・エネルギー対策委員会共同委員長、小川賢治環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会長代行らが出席した。ファン・デル・フーフェン事務局長の説明概要は次のとおり。
■ 世界のエネルギー見通し
一次エネルギー需要は2035年に11年比で3割増加する。需要増を牽引するのは、中国、インドを中心とするアジアである。
エネルギーミックスに占める化石燃料の割合は、今日の約8割から低下するが、それでも35年に75%以上と依然として高く、再生可能エネルギーには期待できない。
エネルギー起源CO2排出量は、35年に12年比2割増の372億トンになる。また、1900年から2035年までのエネルギー起源CO2の累積排出量は、OECD諸国が51%、非OECD諸国が49%を占める。
■ 日本のエネルギー見通し
一次エネルギー需要は35年に11年比で4%減少するが、電力需要は増加していく。
35年の電源構成については、原子力の割合は回復すると想定し、再生可能エネルギーも拡大する。他方、石油およびガス火力の割合は低下する。
エネルギー起源CO2排出量は、11年の12億トンから35年に9億トンに減少し、世界の排出量に占める割合は2.5%にまで低下する。
■ エネルギーと競争力
今日、米国の天然ガス価格は、日本の輸入価格の5分の1、欧州の3分の1にすぎない。この地域間格差は今後縮小するが、35年においても大きい。
エネルギー価格の差は、エネルギー集約型産業の競争力に大きな影響を及ぼす。日本はエネルギーコストが高いため、エネルギー集約型製品の世界輸出市場シェアは低下する。
■ 日本への示唆
(1)エネルギー価格の地域間格差が競争力に影響を及ぼす状況が続くなか、省エネが重要となる。
(2)米国のLNG輸出とアジア太平洋地域のガス市場改革は、ガス価格の地域間格差を縮小し得る。
(3)日本はエネルギー資源に非常に乏しい国であり、原子力という選択肢を捨ててはならない。また、原子力は、化石燃料輸入費と電力価格の低減にとって重要な役割を果たす。
(4)再生可能エネルギーは、エネルギー安全保障や地球温暖化対策に寄与するが、他のエネルギー源に比べて競争力がない国の場合、導入のために補助金を必要とし、国民負担が累積していく。
ドイツにおいては、過大な国民負担を理由に固定価格買取制度を見直す方向性が打ち出されている。
再生可能エネルギー導入のための仕組みは、費用対効果の最も高い方法で目的を達成するために慎重に設計しなければならず、場合によっては設計し直すことも必要である。
【環境本部】