経団連は11月21日、東京・大手町の経団連会館で「2013消費者志向経営トップセミナー」を開催した。同セミナーは経済広報センター、消費者関連専門家会議(ACAP)との共催、消費者庁、文部科学省、経済産業省の後援のもと開催され、約300名が来場した。概要は次のとおり。
■ 開会あいさつ
大宮英明経団連副会長・企業行動委員長
経団連は、2009年9月に公表した「消費者問題に対する経団連の基本的な考え方」および企業行動憲章第1条において、企業が自主的かつ積極的に取り組むべきこととして、社会に有用な商品・サービスを提供する責任と消費者との信頼関係構築を提示している。企業は消費者重視の原点に立ち返り、社内体制の充実に努めてほしい。
■ 来賓あいさつ
森まさこ内閣府特命担当大臣(消費者庁菅久審議官による代読)
健全で活気と厚みのある消費市場構築が、経済の好循環には必要不可欠である。今般の食品表示問題は、商品・サービスを提供するすべての業界・事業者に対する警報である。消費者の誤認を招く不当な表示を根絶するため、企業の経営層がリーダーシップを発揮し、社内体制の再点検や必要な体制の整備を推進していくことを強く期待する。
■ 講演「消費者重視の企業経営」
山口範雄経団連審議員会副議長(味の素会長)
味の素社は創業以来104年にわたり、製品に関する科学的検証を実施し、それを真摯に消費者に伝達することを徹底してきた。当社における「品質」は、商品・サービスの質にとどまらず、それを職務として担う企業人の質、そして企業の経営の質を含めた全体の裏づけによって達成される。また、消費者とのコミュニケーションを特に重視し、お客様対応の窓口では、「正確」「迅速」「親切」「公平」な対応を行い、「満足」を得られるよう活動している。そしてお客様の声は社内で共有され、リスク回避のみならず、継続的な製品の改善活動に活用されている。これらを徹底することにより、はじめて消費者の「安全・安心」が実現されるものと考えている。
■ 講演「消費者行政の目指す姿と企業に期待すること」
阿南久消費者庁長官
カネボウ化粧品における白斑症状発生の問題について、同社がより早期に被害情報を収集・検証し、消費者へ情報発信していれば、被害規模はこれほどまで拡大しなかったかもしれない。また、一連の食品誤表示の問題は、企業の消費者志向経営に疑念を及ぼす重大な事態である。消費者庁では従来から景品表示法違反に関する事例等を公表してきたところであり、企業側の認識不足といわざるを得ない。事業者、消費者双方に長期的利益をもたらす唯一の道は、安全・安心かつ良質な市場の実現であるとの原点にいま一度立ち戻り、消費者との信頼構築や消費者の声を活かした経営を実現することを期待する。
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パネルディスカッション「消費者市民社会の実現に向けて」では、モデレータの高巖麗澤大学教授、パネリストの阿南久消費者庁長官、高山靖子資生堂常勤監査役、古谷由紀子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問、佐分正弘ACAP理事長が、企業と消費者の関わり方、消費者教育における各主体の役割等について、意見交換を行った。まとめとして、高教授から、消費者関連問題について、解決の方向性を事業者側と消費者側で共有すること、そして消費者教育では、行政、事業者、消費者団体等のマルチステークホルダーが連携・協働できるプラットフォームを構築することが重要であるとの指摘があった。
【政治社会本部】