経団連の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は7日、都内でロシア鉄道のボリス・ラピドゥス社長上級顧問一行との懇談会を開催した。ラピドゥス氏の説明の概要は次のとおり。
■ 世界有数の規模を誇るロシア鉄道
ロシアの鉄道は、175年前に初めて敷設されて以来、輸送手段として重要な役割を担ってきた。現在当社は、政府が全株式を保有する公開持ち株会社として、国の東西南北を結ぶ総延長8万5000キロメートルの鉄道網、機関車1万両、客車2万両、貨物車100万両を有し、従業員100万人体制で年間13億トンの貨物を輸送している。
欧州とアジアを結ぶ全長9300キロメートルのシベリア横断鉄道は、完全複線化・電化を達成し、運転管理を自動化している。
■ シベリア横断鉄道の課題
政府は、「2030年までのロシアの鉄道輸送発展戦略」のもと、シベリア横断鉄道の活用に取り組み、12年の貨物輸送量は1億1100万トンに増加した。
しかしながら、トランジット輸送の割合は20%と低い。また、アジアと欧州の貿易は海上輸送が中心であり、大陸横断輸送が占める割合は金額ベースで1%にすぎない。その主な理由は、物流分野に参画する関連企業や税関の連携が不十分なこととインフラが未整備なためである。
■ シベリア横断鉄道の潜在力の活用に向けた取り組み
そこで、政府はシベリア横断鉄道を顧客にとって魅力的なものにするべく、輸送サービス全体を継ぎ目のない一つのシステムとして提供しようとさまざまな施策を行っている。例えば、関連組織間の連携の緊密化はもとより、総額200億ドルを投入してバム鉄道など東部の鉄道や極東港湾の近代化を図っている。
また、トランジット輸送用に45の物流ターミナルを新設する計画である。さらに、複合一貫輸送など各事業に特化した関連会社を設立・買収し、鉄道全体の運営・サービスの品質の向上を進めている。
また、近隣諸国と協力し、「アジア欧州輸送回廊」の構築に取り組んでいる。西部ではウクライナ、スロバキア、オーストリアの鉄道とともにウィーンまで鉄道でつなぐプロジェクトを推進しており、実現すればアジアから欧州中心部に積み替えなしで貨物を輸送できる。また、東部でも鉄道ネットワークの拡充に努め、中国の重慶からモンゴルやカザフスタンを経て、モスクワや欧州へ至る輸送ルートの活用に取り組んでいる。
■ 日本企業との多様な協力に期待
日本からロシアや欧州への貨物輸送において、鉄道網は、海路に比して、近距離であるため、時間の短縮という点で優位である。当社は日本企業を含む顧客の要望を調査し、新商品を開発してロシア東部からモスクワ等に、貨物を7日間で輸送している。ロシア国内で工場を操業中の日本の自動車企業にも、ぜひ利用してほしい。
また、各種施設・設備の近代化にあたり、直接投資を含む日本企業の参画を歓迎する。高速鉄道分野での日本の技術と経験を高く評価しており、規格や気候の違いはあるものの、日本企業の提案を期待している。
鉄道分野には多様な協力のもと大きな可能性が存在している。本日の会合を契機に、長期的なパートナーとしての関係を構築していきたい。
【国際経済本部】